私は会社で人事の仕事をしていることもあり、この時期は新卒採用に関する仕事の割合が多くなります。
今回は以前から感じている、リクルートスーツについての違和感にいて触れてみようと思います。
現在の新卒採用の状況は?
現在就活中、もしくはこれからという方もいらっしゃるかもしれませんが、本ブログをご覧いただいていている方の多くにとって、就活は過去の話かと思いますので、新卒採用・就職活動の近況を簡単にご報告。
売り手市場から変化も・・・
コロナ前の世代、つまり20年卒までは、年々深刻になる少子化と表面的に続いていた好景気の影響で、新卒採用市場は圧倒的に学生有利の売り手市場が展開されていました。一部の大手を除き、多くの企業の採用担当者は、学生に内々定を出しても夏から秋にかけて、辞退の申出が続出する状況に頭を悩ませていませていたのです。
その状況に変化が生じたのは昨年。もちろん新型コロナウィルスの感染拡大が原因です。多くのメディアが昨年の有効求人倍率が低下したことを報じました。
参照:第37回 ワークス大卒求人倍率調査(2021年卒) | Recruit - リクルートグループ
有効求人倍率の低下は事実(20年卒1.83倍⇒21年卒1.53倍)ですが、リーマンショック期(12卒1.23倍)や氷河期(00卒0.99倍)ほどは酷くありません。
昨年、JALとANAが新卒採用を中止したことは大きな話題になりましたが、実際に採用人数を絞るほどコロナの影響を大きく受ける業界は限られています。
私が勤務する会社もそうですが、幸いにもコロナによる影響が少なかった会社は、この状況をチャンスと捉え積極的な採用を進めています。
学生にとっては希望する業界を諦めざる得ないケースも発生するかもしれませんが、全体で見れば決して「企業有利・学生不利」な買い手市場になったわけではないということですね。
採用試験形態の変化
求人数以上にコロナ禍で大きく変化したのは、採用試験の形態です。
私の会社では、従来対面で行われていた説明会・筆記試験・面接は昨年より全てオンラインで実施されています。
学生も企業も徐々にリモート試験には慣れてきましたが、入社するまでお互い直接顔を合せる機会がないというのはどうなのでしようか?少し考えさせられます。
さらに入社しても、入社式や集合研修なども全てオンラインで、同期が一堂に会する機会はなく、新入社員の子が可哀想にも思えてきます。もしかしてその感覚自体が古いかもしれませんが。
リクルートスーツはなぜか黒
ここから本題。
新卒採用を取り巻く環境が変わっても、就活生のスーツといえば無地の黒です。
参照:スタイリッシュスーツ《就活》《黒無地》《ツーパンツ》(PER81S2B-91) | PERSON'S FOR MEN | 紳士服・スーツ販売数世界No.1 - 洋服の青山【公式通販】
社会人の皆さんにとっては常識的なことですが、黒のスーツはビジネスの場ではNGとされています。日本ではブラックスーツについて欧米ほど厳格ではありませんが、それでも黒を選ぶ人は少数派でしょう。
では、なぜ黒のスーツがリクルートスーツの定番として定着してのでしょうか?
これにはいくつかの定説があります。
ネイビースーツへの反発説
私が就活をしていた2010年頃には既に「リクルートスーツ=黒」でしたが、その風潮は2000年以降のことで、それまでの就活生のスーツと言えば男女ともに無地のネイビーだったそうです。
その中で、ネイビーのスーツを着た学生で溢れかえると、没個性になることを嫌い、差別化を図るため黒のスーツを着る者があらわれ、徐々にその数は増え一般化されたという説。
その理屈であれば、黒一色になった反動でネイビーや他の色を選ぶ人が増えそうですが、そのような兆しは感じられません。
モード系ファッションの影響説
00年代に入ると一部の若者を中心に、モノトーンでスタイリッシュに決めるモード系ファッションが流行しました。
モード系ファッションの影響でタイトなフィッティングと共に、黒のスーツが人気を博したのではないかという説。
黒は無難な色説
モード系の影響で市民権を得た黒色の服は、「カッコいい」というだけではなく、「無難な色」と世間で認識されるようになりました。
服装で目立つことを良しとしない就活の場において、無難な色として黒のスーツが選ばれるようになったという説。
冠婚葬祭でも使える説
長引く不況の影響で合理的な思考が浸透。その結果、黒のスーツであれば冠婚葬祭でも使えるのではないかと、初めてのスーツに黒が選ばれるようになったという説。
結婚式はともかく、同じ黒のスーツでもビジネス用と葬儀で着る準礼服は完全に別物です。周りの大人が注意してあげましょう。
コレだと納得できる理由はありませんが、複数の要因が絡み合って、「リクルートスーツ=黒」の図式が出来上がるまでに勢力を伸ばしてきました。
おすすめは無地のネイビー
理由はどうあれ、周りの人が黒のスーツを着ていたら、自分も黒を選びたくなる気持ちはよく分かります。
私は父の薦めもあり、ネイビーのスーツで就活に挑みましたが、周りと違うことに少し戸惑った記憶があります。
それでもなお、新卒採用を10年間担当して思うのは、やはりリクルートスーツは無地のネイビーがベストだということです。
参照:スタイリッシュスーツ(CRT85383-12) | RITORNO | 紳士服・スーツ販売数世界No.1 - 洋服の青山【公式通販】
私がネイビーを推す理由は以下の4点。
黒スーツは絶対NGおじさん
企業の採用担当者であれば黒のスーツが一般的であることは理解していますが、最終面接に登場する重役のおじさん達はそこら辺の事情を把握していない場合もあります。
また、50代以上の方は「リクルートスーツといえばネイビー」の世代です。人によっては「黒のスーツなんて非常識だ、けしからん!」となるわけです。
まぁ、実際そんなことはほとんどないと思いますが、可能性がある以上は排除しておいた方が適切でしょう。
分かっている感を演出
多くの学生が黒いスーツに身を包む中、1人だけネイビーのスーツを着ていたとしても、それを悪目立ちと捉える採用担当者はまずいません。
本来なら黒のスーツはビジネスの場で適していないことを社会人であれば誰でも理解している常識だからです。
逆にネイビーのスーツを選ぶことで、「お、この子はちゃんと分かってるな」と思わせることができるかもしれません。
そのことが直接採用に繋がることはないと思いますが、マイナスになることもないでしょう。
グレーより見た目は爽やかで好印象
「黒はNG」ということであれば、ネイビー同様に定番のグレー系のスーツも良いと思います。
個人的な趣味で言えばネイビーよりグレーの方が好きなのですが、おじさん臭さは否めません。良く言えば貫禄が出ますが、そんなものを二十歳そこそこの若者には求めていないので、やはり爽やかで好印象を与えるネイビーが良いでしょう。
一重にネイビーといっても色味に幅がありますが、ダークネイビー(濃紺)なら黒スーツの中でも浮くことはないのでおすすめです。
就職してからも使い勝手が良い
どんなに黒のリクルートスーツが市民権を得たとしても、ビジネスシーンにおいて黒のスーツは完全に変化球です。王道のネイビースーツは社会に出てから必要になること間違いないありません。
「就活用」と限定せず、就職してからも使える一着を選びましょう。
せめてここは気を付けて!
ここまで浸透している黒のリクルートスーツをいまさら否定するつもりはありませんが、スーツを着る上で最低限の着用マナーは守ってもらいたいものです。
私が説明会や面接で見てきた学生の中で「これはちょっと・・・」と思った事例をご紹介。
ジャケットのボタンを全部留めている
ジャケットの一番下のボタンは留めないとい「アンボタンマナー」が存在します。「留められるボタンは全て留めた方が良いだろう」という感覚も分からなくもありませんが、正式な着方ではなく、なにより見た目がカッコ悪いですね。
ベントのしつけ糸が付いたまま
ベントとは後ろ裾に入る切れ目です。吊るしのスーツでも購入時にお店の方がしつけ糸を外してくれるような気がしますが、なぜか糸留めされたままの人が稀にいます。
ミスマッチな靴下
紳士服店で、スーツと一緒にネクタイ・ベルト・靴・鞄を店員さんからアドバイスを貰いながら選ぶので、明らかに変な物を使っている人はいませんが、妙な靴下を履いて人なら見かけます。
中学生のような白い靴下、ドットやボーダーの靴下・・・
着席すると靴下はかなり目立つので、最低限の気は使いましょう。
本来であればロングホーズが正解ですが、ユニクロの3足990円の黒靴下でも十分です。
目立ちすぎる腕時計
どこかの指南書に「社会人として相応しいように腕時計は着用しましょう。」とでも書いていたのだろうか、たまたま持っていたG-SHOCKのような大きな腕時計を巻いている人がいます。
出来れば薄型のドレスウォッチが望ましいですが、手元になければ別に腕時計は付けなくても問題ありません。
それでも、就活を機にセイコーかシチズンで2~3万円のクォーツ時計を購入すれば、社会人になってもしばらくは困らないので、ちょっと良い時計を新しく買うという選択肢もありです。
まとめ
何かの縁でこの記事に辿り着いた学生の方には、少しでもご参考になれば幸いです。
また、大人世代の方にとってどれも当たり前の内容だったかもしれませんが、もし身近に就活中または就活準備中の方がいれば、是非ともスーツのルールやマナーを伝えてあげてください。
私の父はファッションに無頓着でしたが、スーツに関するルールやマナーは父から教わりました。
社会人になれば、いずれどこかのタイミングで誰かに指摘されて知ることになりますが、それは早いに越したことはないでしょう。
今回は以上です。