ダッフルコートの本場といえばイギリス。そしてイギリスのダッフルコートで代表的なブランドといえばグローバーオールやグレンフェルあたりでしょうか。
長らくダッフルコートを敬遠していた私でしたが、2年前に急にその存在が気になり始め、購入を検討したのはやはりそれらのブランドでした。
しかし、いざ探し始めると意外にも実店舗では見つからず、それなりに高価なものなので、オンラインショップという手段も躊躇います。
そんな中で偶然に見かけたのが、このLONDON TRADITION(ロンドントラディション)というブランドでした。正直それまで聞いたこともありませんでしたが、「ロンドン」で「トラディション」だなんて私の大好物を組み合わせたネーミングはフックが効きまくりで、興味を惹くのに十分な理由でした。
しかし、このロンドントラディション、名前だけではございません。熟練した技術に裏付けられた本格派です。今回はダッフルコートの新定番となるべく人気拡大中のロンドントラディションの魅力をお伝えしていきます。
ロンドントラディションとは?
意外にも歴史は浅いが・・・
その名前からして、さぞ歴史があるのかと思いきや、創業は2000年と意外にも若いブランドです。しかし、歴史は浅くとも創業メンバーはそれぞれイギリスの老舗衣料メーカー出身であったことから、伝統的な技法にも基づいた熟練の技術は早々に評判を呼び、バーバリーなどの一流メゾンのコートの生産を担ってきました。
現在でもイギリス国内を中心に多くのブランドのアウター製造を請け負いつつ、自身のブランドも展開する、いわゆるファクトリーブランドです。
ロンドントラディションの特徴は大きく2つ。いずれもそのネーミング通りです。
まずは自社工場がロンドン郊外にあるとから、縫製は全てメイド・イン・イングランドであるということ。
そしてもう一つは、裏地を使わないダブルフェイス仕立てや、奇をてらわずに各コートの王道を踏襲したディテールなど、伝統に基づいたベーシックなアウター作りにこだわっているということ。
要するに「ロンドン(イングランド)」で「トラディション(伝統)」なブランド名に偽りなしということですよ。なんだそれ(笑)
最後にもう1つロンドントラディションの特徴を加えるなら、5万円前後で手に入るという魅力的な価格設定です。英国製の本格ダッフルコートの相場が10万円オーバーであることを考えると、比較的に手を出しやすいのではないでしょうか。
ロンドントラディションのラインナップ
ロンドントラディションにはキルティングジャケトやマフラーの取り扱いもあるようですが、基本的にはウールコートの生産を事業の核としているブランドです。
また、現時点では日本版の公式オンラインショップがないので、購入は全国のセレクトショップを頼ることになります。では、現在国内で購入可能なロンドントラディションのコートをいくつか見ていきましょう。
◆マーティン
ブランドを代表するモデル「マーティン」。日本で見かけるロンドントラディションのコートの多くはこのコートから派生したモデルだと思います。どこを取っても、正にダッフルコートの王道を行くデザインと言えるでしょう。
◆モンティー
こちらも同じくダッフルコートですが、スナップボタンで調節可能なフードや、トグルの本数、サイドポケットや裏地の仕様に違いが見られます。ちなみに麻紐・木製トグルはマーティンでも採用されることがあるので、こちらのモンティーの専売ではないようです。
◆ジャクソン
【楽天市場】ロンドントラディション メンズ ハーフコート LONDON TRADITION JACKSON Half Length Coat:HARTLEY 楽天市場店 (rakuten.co.jp)
「ロンドントラディション=ダッフルコート」と思っていただいても概ね差支えはなさそうですが、ダッフルコート以外からも一つだけピックアップしておきましょう。こちらはダッフルコートで使われる重厚な生地を採用したハーフコート。襟の形や革巻きのボタンからは可愛らしい雰囲気も感じますが、しっかりとした素材感やダークトーンの色味のおかげで、大人の男性が着ても様になりそうですね。
ロンドントラディションのダッフルコートをレビュー
ディテール
こちらは2年前に購入した、アーバンリサーチ別注の「マーティン」。日本人に合わせて、アームホールの大きさや丈感を調整する一方で、身幅はオリジナル同様にゆったりと余裕があるクラシックモデルです。そのためトラッドな雰囲気が全快となっています。スッキリとしたスリムタイプも人気があるので、好き嫌いが分かれそうなところではありますが、もちろん私はこういうの大好きです。
ウール70%にナイロン・ポリエステル・アクリルを混合した起毛感の強い生地は、ザラザラとした粗い手触りとなっています。光沢があって滑らかな生地が良しとされるウールコートですが、ダッフルコートの出自はあくまでも漁師の作業着。この生地の独特な質感には、織りを隠すように表面をフェルト加工することで冷気の侵入を防ぐ効果があるそうです。実際にこのコートの防寒性能はかなり高く、冬であっても気温によっては暑すぎて着れたものではありません。
最近はドレッシーで大人っぽいダッフルコートが人気なようですが、こういった野暮ったいけど如何にも本格派な生地も捨てたものではありませんよ。
ダッフルコートの顔(頭?)でもあるフードはこんな感じ。生地がかなりしっかりとしているので、頭に被らずとも立体的で存在感があります。
フードと並びダッフルコートの象徴であるフロントは本革紐に水牛のトグルです。一着の中でもトグルの表情が全く違うのは本水牛ならではですね。
トグル以外のボタンも本水牛で、少し分かりにくいですが、側面にブランド名が刻印されたオリジナルボタンとなっています。
ダッフルコートらしい大型のサイドポケットはフラップ付き。単なるパッチポケット型のダッフルコートも見かけますが、個人的には締まりがないように感じるので、断然パッチフラップポケット推しです。
ロンドントラディションの特徴でもある裏地なしのダブルフェィス仕立て。ダブルフェイスとは、一般的なコートのようにポリエステルやキュプラ製の滑らかな裏地が取りけられる代わりに、表地と同素材の生地を張り合わせる手法です。別にリバーシブルというわけではありません。
ダブルフェイスのメリットは保温性の向上と、このコートのように裏面にもチェックなどのデザインを加えやすいということ。そしてデメリットは重さと袖通しの悪さといったところでしょうか。
重くなるというのは間違いなく、このコートは実際に約1.8kgもあります。ちなみに一般的なメンズのウールコートは1kg~1.5kg程なので、かなり重い部類に入るでしょう。慣れないうちは肩が凝って仕方がありませんでした。一方で袖通しについて感じることは人それぞれかもしれません。このコートな場合、裏面は表地よりかは起毛が抑えられており、半袖や薄手のシャツ一枚の上に羽織るワケではないので、個人的には全然気にならないですね。
サイズ感
身長173cm体重65kg肩幅44cmの私が選んだのはMサイズ相当のサイズ38。着丈は膝上のミドル丈となっています。このダッフルコート「マーティン」にはショート丈のモデルも存在しますが、ちょっと子どもっぽくなりすぎるので注意が必要です。また、個人的にはトグルを留めないほうが、キレイなAラインシルエットが出るので気に入っています。
それでも寒ければ前は閉じますが、それでもゆったりとリラックス感のあるシルエットはある程度キープされています。
コーディネート
コート:LONDON TRADITION(ロンドントラディション)
ニット:ユニクロ
パンツ:A.P.C(アーペーセー)
ダッフルコートはどうあがいてもカジュアルアイテムに分類されますが、いわゆる「ドレス:カジュアル論」に無理やり当てはめることもないと思います。ただ、ダッフルコート以外は暗めのトーンにまとめておいた方が、子どもっぽさ・カジュアルさは幾分か緩和されので無難ですね。
コート:LONDON TRADITION(ロンドントラディション)
ニット:FRED PERRY(フレッドペリー)
シャツ:BROOKS BROTHERS(ブルックスブラザーズ)
パンツ:INCOTEX(インコテックス)
靴:REGAL(リーガル)
先程の理屈に早速反していますが、チルデンニットとウィングチップの革靴を合わせたカジュアルなブリティッシュトラッドコーデ。好みが分かれそうではありますが、ダッフルコートは英国を象徴するアイテムでもあるので、これくらい振り切ってみるのもアリでしょう。
まとめ
ダッフルコートは数あるコート類の中でも特異な存在なので、苦手だという方も多いのでしょうが、似たり寄ったりなコートを使った、ワンパターンになりがちな冬のコーデに変化を付けることが出来るので、一着でも持っている方ならその利便性を実感していることでしょう。
ただ、多くの方が指摘するようにダッフルコートは一歩間違えると学生ぽくなってしまうので、他のコート以上に上質なものを選び差別化をする必要があります。その点でロンドントラディションのダッフルコートは、本場仕込みの確かなクオリティーを持ちながら、現実的な価格なので、間違いなくおすすめです。
まだまだ取り扱いをしている店舗が少ないのは難点ですが、もし実物を見かける機会があれば、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
今回は以上です。