トラッドマンに憧れて

自分なりのトラッドスタイルを模索する30代のリアルな服・靴・時計etc…について

RING JACKET(リングヂャケット)の春めく三者混ジャケットをご紹介します。

少し前まで冬に逆戻りしたような肌寒い日々が続いていましたが、今度こそ本当に春到来です。

 

生まれ月でもある春はもともと大好きな季節ですが、今年はいつも以上に楽しみに待っていました。

 

その理由は昨年夏のセール最終盤で購入したジャケットが待っていたからです。秋口にも少し袖を通しましたが、これはやっぱり春に着てこそ。そんなジャケットです。

 

そしてここまで待望していたのは、長らく憧れていたRING JACKET(リングヂャケット)だからでもあります。

 

「国産既製テーラードの雄」と称される程に高い評価と知名度を誇るリングヂャケットです。いつかは手にしたいと思いもいながらも先延ばしにしていましたが、セール価格という後押しがあり昨年夏にようやく購入へと至りました。

 

エレガントなインポートジャケットにも惹かれますが、日本人の体形に合わせた真面目な造りの国産ブランドの魅力はやはり特別なものがありますね。

 

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RING JACKET(リングヂャケット)について

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ドレス、トラッド好きの方であれば当然ご存知のブランドだと思いますが、簡単に紹介させてください。

 

1954年大阪にて創業。当時はまだ「街の仕立て屋さん」が多くの残っていた時代で、スーツやジャケットといえばテーラーによるオーダーメードが主流でした。また既製品のスーツもあるにはあったそうですが、今とは比較にならない程粗悪な物が多かったとか。

 

そのような中で 「注文服のような着心地の既製服」を理念に掲げるリングヂャケットは異色の存在であった一方で、自社工場で仕立てられたスーツは名門テーラー顔負けのクオリティーで同業者の評判を呼び、いくつかのブランドから既製服の製造を任されるようになりました。

 

特に創業初期には日本でのアイビーブームを牽引したヴァンヂャケットのスーツ製造を請け負っていたことは今となっては有名な話です。

 

ちなみにヴァンヂャケット創業者の石津謙介氏とリングヂャケット創業者の福島乗一氏は同郷の盟友で、石津氏が社名を命名したことからヴァンヂャケットに倣い「ジャケット」ではなく「ヂャケット」表記になったとのこと。

 

ヴァンヂャケットと共に歩んだ草創期は他のテーラーやブランド同様にイギリスやアメリカに倣った堅実な服作りを得意として業界内では一定の評価を得ていましたが、現状に満足することなく80年代に入ると軽やかな仕立てのイタリア式に着目します。現地のファクトリーで技術指導を受けるなど、国内ではどこよりも早くイタリア仕込みのテーラリングを修得していきました。

 

そして転機が訪れたのは90年代初期に巻き起こったクラシコイタリア・ブームです。国内では先駆者的存在であったリングヂャケットにはビームスユナイテッドアローズなど大手セレクトショップからOEM依頼が殺到し、1996年には満を持して自社ブランド「Sartoria Ring(後にRING JACKETに改名)」が登場。

 

本格的なイタリア式テーラードを日本人の体形に合わせた既製服で提供するという唯一無二の存在として、その人気を不動のものにして現在に至ります。

 

三者混ジャケットをレビュー

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概要

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここからは昨年の夏にセールで購入したジャケットをご紹介していきます。

 

現在のリングヂャケットには「RING JACKET MEISTER」「RING JACKET MEISTER 206」という上位ラインが存在しますが、こちらはベースラインに相当する「RING JACKET」レーベルのジャケットになります。

 

私がこれまで着てこなかったようなトーンの明るい生地は春っぽさ全開です。どうしてもジャケットを選ぶ時は、春と秋どちらで着ても違和感がないような色味(ネイビー、ブラウン)を優先することが多かった気がしますが、ここまで振り切って季節感を感じるジャケットはワードローブの強力なカードになり得ます。着回し上手だけじゃ到達できない世界もあるはずです。

 

春らしく三者混の生地を使用していますが、その組み合わせは一般的なウール・リネン・シルクではなく、シルクの代わりにコットンが入った少し珍しい生地です。しかもコットンの比率が44%と最も高くなっているため、ハリのないくたっとした生地感がリラックスした雰囲気を醸し出していますね。

 

リングヂャケットの既製ジャケットにはいくつかの型がありますが、このジャケットは「No-269」というモデルが採用されています。存在感のあるワイドなラペルが特徴的で、ややゆったりとした身幅と長めの着丈が相まって、リングヂャケットの中でも特にクラシック色が強いモデルとなっています。

 

また、このモデルに限った話ではありませんが、リングヂャケットは日本人の前肩体形(西洋人と比べて日本人は肩が前に付いているそうです。)に合わせて前身頃を小さく、後見頃を大きくとった構造となっています。そのため上の写真のようにハンガーに掛けると自然と袖が前方に垂れてくるのです。他にも色々とありますが、ここら辺が日本人の体形に合わせたテーラーと名高い所以ですね。

 

ディテール

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コットン・ウール・リネンで構成される三者混の生地はとても表情豊か。少しぼんやりとした柄(トリプルウインドウペーン)の入り方もお気に入りのポイント。光沢と毛羽立ちは抑えれていて、手触りはややマットな質感となっています。

 

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ラペル幅は8.0㎝~8.5㎝が最近の主流とされる中で、9.4㎝のワイドラペルはなかなか存在感があります。ただ、クラシックなジャケットとしては全く常識の範囲内なので悪目立ちするというわけではなく、あくまでもオーソドックス。ゴージラインは高めに設定され、その線は緩やかにカーブを描きます。

 

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ラペルのロールもきれいですね。ジャケットの顔でもあるラペルが潰れてしまう一気に貧相な感じになってしまうので、クリーニングを含む取り扱いには注意が必要です。

 

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襟裏を見ると高級ジャケットの証ともいわれる「ヒゲ襟」を確認できます。所詮見た目にも着心地にも影響しない、昔の名残りでしかないディテールなので、無くても気にはなりませんが、見えない部分にも抜かりがないところにクラフトマンシップを感じます。

 

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肩パッドを廃したナチュラルショルダーですが、雨降り袖のギャザーは控えめ。ここは特に通常ラインと上位ライン(マイスターモデル)との分かりやすい違いかもしれません。

 

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ボタンの素材はおそらくナットで、色は深めのネイビー。この価格帯(10万前後)なら水牛ボタンがスタンダードだと思っていたので少し意外でした。でもナットボタンならではの柔和な雰囲気は生地の質感とはよく合っているかと思います。

 

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使うことはなさそうですが、袖のボタン付けは本切羽でお願いしています。本切羽自体がイタリア発のディテールなので、使う使わない以前にこういった細かい所の積み重ねが全体で醸し出す雰囲気を作り上げると私は思い込んでいます。先程挙げたヒゲ襟も同じですね。

 

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カジュアルジャケットなのでポケットはもちろんパッチポケット。チェック柄もきっちり揃ってます。

 

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春夏物ということで裏地は背抜き仕様で、素材は当然キュプラです。イタリア物のジャケットでよく見られる半裏仕様は、生地を保護する観点からもリンクヂャケットではあまり採用されないみたいです。

 

また、左ポケットの縁回りが表と同じ生地で囲われている台場仕立てになっています。軽量化が図られたイタリア式のジャケットで強度を高めるためによく見られるディテールですが、生地を多く使い手間もかかるだけに、高級な仕様とされています。私はこのディテールをそこまで重要視していないので、オーダーする時もオプションで選んだことはありせんが、あったらあったで少し嬉しいですね(笑)。

 

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ベントいつものサイドベンツ。そういえばセンターベントのジャケットって最近見なくなりましたよね。私は断然サイドベンツ派なので構いませんが、ベントにも流行り廃りがあるのでしょうか。

 

サイズ感と着用感

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身長173㎝体重65㎏肩幅44㎝の私はサイズ46を着ています。ジャケットは肩幅に合わせるのがサイズ選びの基本です。ただ、このジャケットで採用されている「No-269」という型はリングヂャケットの中でもゆったりとしたサイズ感のモデルのため、肩で合わせると見幅が少し緩くなってしまいます。そこでウエストを数センチだけ絞ってもらいました。。もちろん袖丈も調整済です。

 

華奢な日本人に合わせてアームホールは小さめに設計されています。これにより見た目がすっきりとしただけではなく、腕を動かした時に余分な生地が引っ張られにくくなります。実際に動く中できれいに見せることって本当に大事ですよね。

 

肩から胸元にかけてのラインも身体に沿うようにフィットしています。これも立体的なパターンとアイロンワークが成せる技です。

 

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こちらは後ろから。お尻がほぼ隠れる長めの着丈となっています。昔はもっと短い丈も着ていましたが、最近はこれぐらいの長さがないと落ち着かないですね。

 

背中にも変な皺がなく、流石は日本人の体形に合ったリングヂャケット・・・と言いたいところですが、最初は今まで経験したことがない程にツキ皴(首元に余った生地が溜まってできる皺)が出ていました。元々ツキ皺が出やすい体形ではありましたが、国産のリングヂャケットでこんなに酷い皺が出るとはちょっとショックでした。その時の写真を撮っておけば分かりやすかったのですが。

 

ただ、そのツキ皺もお直しでこのようにキレイさっぱり。少しシワっぽく見えるのはハリのない生地感と背抜き仕様の影響です。

 

結局ウエスト、袖丈、背中とかなり補正を行っていますので、フィッティングに関してはもはやパターンオーダー状態です。その分お直し料金(確か1万円ちょっと)が発生していますが、熟練の店員さんの下でしっかりと調整を行えるので、既製品だからサイズ感、着用感を妥協するという概念が吹っ飛んでしまいますよ。

 

もちろんビスポーク(フルオーダー)となれば話は別ですが、リングヂャケットでは既製品といえども微調整が前提なので、パターンオーダーとなら全く引けを取らないというのが個人的な見解です。

 

コーディネート

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ジャケット:RING JACKET(リングヂャケット)

シャツ:メーカーズシャツ鎌倉

ネクタイ:FAIRFAX(フェアファクス)

パンツ:INCOTEX(インコテックス)

靴:JALAN SRIWIJAYA(ジャランスリワヤ)

 

私の勤務先は残念ながらジャケパンスタイルが禁止(スーツオンリー)の職場なので、このジャケットも専らオフ用になりますが、タイドアップするならこんな感じでしょうか。

 

薄っすらと青みがかったBDシャツとロイヤルブルーのニットタイを合わせて上半身は同系統色でまとめています。ビジネスっぽくなりすぎないように、明るめのコットンパンツと地肌を見せるように履いたローファーでほどよくカジュアルダウンです。

 

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ジャケット:RING JACKET(リングヂャケット)

ポロシャツ:RALPH LAUREN (ラルフローレン)

パンツ:A.P.C(アーペーセー)

靴:CROCKETT&JONES(クロケット&ジョーンズ)

 

こちらはポロシャツとデニムに合わせた、特に捻りのないシンプルなカジュアルコーデ。このジャケットのデザイン自体はかなりクラシック寄りですが、抜け感のある素材故にこのような装いとも親和性を発揮してくれます。

 

まとめ

ようやくこのジャケットを着られる季節になりましたが、GW頃にはもう夏のような暑さになっているんでしょうね。そう考えると着用期間は意外と短いのかもしれません。

 

もちろん気候がに似ている秋口でも着用可能ですが、その本領を発揮するのは間違いなく今、春なのです。

 

昨年の夏から満を持して投入したジャケットですが、今まで選んでこなかった色味だけに、手持ちのワードローブとの相性の悪さが露見しています。正直本文中で紹介したコーディネートも納得いくものではありません。

 

まぁ、それを理由にここ最近色々と買い足しているのですが、それはまた後日。

 

今回は以上です。