日本のビジネスマンを足元から支える紳士靴のリーディングカンパニー・REGAL(リーガル)。
多くの方が一度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。私も今までに数足(現在手元には2足)を所有してきました。
そんな日本を代表する老舗シューメーカーのリーガルですが、ここ最近で新しい動きがあり転換期を迎えていることをご存知でしょうか?
吉と出るか凶と出るか。直近の事情と私見を交えた今後の展望を書いてみようかと思いますので、よろしければお付き合いください。
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コロナ禍で革靴離れが加速して・・・
ビジネススタイルのカジュアル化が進み、ただでさえ苦戦を強いられていた紳士服・革靴業界でしたが、コロナ禍でのリモートワーク促進は決定打となり多くの企業が経営的にも厳しい状況に置かれています。紳士服量販店の青山商事やAOKIコーポレーションの経営不振を伝えるニュースは良く耳にしますよね。
それは「リーガル」ブランドを展開するリーガルコーポレーションにも該当する話で、コロナ前後となる2019年度と2020年度を売上高ベースで比較すると約100億円(前年比-35%)の減収となっています。
リーガルの顧客はあくまでも一般のビジネスマンです。所属する組織から履くことを強制されなければ、わざわざ革靴なんて選ばないというのが普通の人の考えなので、このご時世リーガルの売上減も当然といえば当然ですね。
ただ問題はこれがコロナ禍による一時的な現象ではないということ。皆さんもお察しの通り、コロナ禍で進んだ働き方の多様化がこのまま定着していくのは明らかです。そうなれば、今まで通り一般のビジネスマンをメインターゲットに据えた業態では苦戦が続くことは間違いありません。昨年度の売上は若干の回復傾向にありましたが、以前のようにとはそう簡単にはいかないでしょう。
新コレクションが続々と登場
そんな厳しい状況に置かれているリーガルですが、打開策としていくつかの新コレクションが投入されました。その中でも特に気になる2つのコレクションをピックアップしてご紹介します。
The MASTER REGAL
2021年秋に登場したリーガルの最上位ライン。現時点でストレートチップ、サドルシューズ、ウィングチップの3モデル展開で、オンラインでの販売は行わずに一部の実店舗のみでしか販売していないストロングスタイルを貫いています。
熟練の職人による日本製でアッパーとライナーにはフランスの名タンナー・デュプイ社のカーフを使用。製法はもちろんグッドイヤーウェルトでレザーソールの縫い付けには伏せ縫いを採用。そして製品の仕上げには手間暇をかけてハンドポリッシュを行うなど通常ラインとは明らかに異なる上質な一足となっています。
幸いにも地元にマスターリーガルの取り扱い店舗があったので、ストレートチップを試着させていただく機会がありましたが。まるでインポートの高級革靴のような重厚感があり堅牢な見た目である一方で、履き心地はストレスなく柔らかな印象を持ちました。私が知っているリーガルとはやはり別格ですね。
その変わりに価格もスペシャルでいずれのモデルも52,800円に設定されています。従来のリーガルはボリュームゾーンが2万円台で、高くても3万円台後半といった具合だったので比較的高価にはなりますが、クオリティを考えれば妥当というかむしろリーズナブルではないかなと個人的には思った次第です。
NEW Classic
参照:REGAL NEW Classic | リーガル ニュークラシック
2022年4月に登場したばかりの「ニュークラシック」コレクション。「変わらないことの価値、変わることの価値」をテーマに、アーカイブに基づいたクラシカルな木型を使いながら、グッドイヤーウェルト製法の靴としては珍しいカップインソールを採用して、機能性の高いラバーソールを組み合わせるなど、伝統にとらわれすぎることのない発想で、現代的なクラシックスタンダードを提案しています。
現時点ではスニーカー1足を含む6モデルを展開しており、価格はいずれも35,200円。こちらも少し高めの価格設定となっていますが、いくつかのモデルで入荷待ちの状況が続くなど、好調なスタートを切ることに成功しているみたいです。
今後の展望
実用品から趣味へ
先にも触れましたが、従来通りに一般のビジネスマン層にターゲットを絞りすぎると今後先細りする未来しか見えないわけですが、となればある程度趣味性に特化した分野にも力を入れていく必要があります。
あいにく私の周りには革靴好きを公言しているような人はいませんが、今年になって今更始めたインスタグラムで革靴愛に溢れた方の多さに驚かされました。やはり趣味としての革靴のニーズは見過ごせません。
その点で言えば「マスターリーガル」はそこそこの革靴を求める一般層からしたら明らかに贅沢すぎる(そしてその価値は理解されない)仕様だし、「ニュークラシック」に関してもラインナップの内ストレートチップを除く5足はカジュアル用途の靴であることから分かるように、どちらも非常に趣味性が高いコレクションとなっています。
ビジネスでの実用品ではく、趣味性に振り切った路線というのが今後は重要だと思うんですよね。リーガルに限らず多くの革靴メーカーにとっては。
目指すべきはSEIKOか・・・
実用品から趣味へという意味で近い立ち場にあるのは腕時計業界でしょう。かつての腕時計はビジネスマンの必須アイテムでしたが、携帯電話が普及した現在においては必要性が薄れてきました。
国産時計メーカーの雄・SEIKO(セイコー)もその波に飲まれ一時期は業績が大きく悪化しましたが、世間で言われる「時計離れ」のイメージに反して近年は緩やかに回復傾向にあります。
その原動力は趣味性に特化した機械式時計部門の強化でした。特に高級ラインである「グランドセイコー」のリブランディングの成功が大きな役目を果たしたのはご存知の通り。
そこで「マスターリーガル」こそ「グランドセイコー」を目指すべきではないかと個人的には感じています。
まず国産高級革靴というジャンルがまだまだ手薄であるということ。オールデン、JMウエストン、チャーチ、パラブーツ・・・等々、革靴フリークが好む本格革靴はどれも海外ブランドばかりです。
国産の中にもそれらに匹敵するようなクオリティを持つ高級革靴ブランドはいくつかあるのですが、どれもブランディングに成功しているとは言い難い状況でしょう。
やはりブランド力と歴史の長さは切っても切れない関係です。特に革靴業界はなおさら。どんなに素晴らしい仕事を見せるシューメーカーでも一朝一夕では相応しいブランド力を築き上げることは困難なのです。
そういう意味でマスターリーガルは実に都合が良い。日本初の洋式靴メーカーというルーツを持つリーガルは歴史に基づいた信頼と実績については申し分ありません。グランドセイコー然り、自動車メーカーのレクサス然りそれぞれセイコー・トヨタという各分野のトップランナーがバックボーンにあるからこそ説得力(=ブランド力)が生まれるのです。
ただ、リーガルにしろセイコーやトヨタにしろ信頼性はあっても基本的には庶民のためのメーカーなので、高級ブランドとして売り出すには母体となる通常ラインとの差別化も必要となります。
その点でもマスターリーガルというブランド名は、歴史あるリーガルとの繋がりと、そのリーガルより格上であることが容易に連想できるネーミングです。「グランドセイコー方式」といったところでしょうか。また、販売方法を限定するという手法も消費者に特別感を与えいて、差別化という面から見ても効果的かと思います。
グランドセイコーのように商業的な成功を修めるのは簡単なことではありませんが、マスターリーガルにはその下地は揃っています。まだまだ始まったばかりなので、じっくりとブランドを育てて欲しいものですね。
シェットランドフォックスとの棲み分けは?
シェットランドフォックスというブランドをご存知でしょうか。リーガルコーポレーションが展開するブランドの一つで、一般的には「リーガルの上位ブランド」と紹介されています。
ただ、革靴好きの中でも知名度はいまいちで、前項で挙げた「ブランディングに成功しているとは言い難い国産高級ブランド」の典型だと個人的には思っています。まぁ、このブランド関しては敢えて「知る人ぞ知る」ポジションを選んでいる節もあるのですが。
しかし、このシェットランドフォックスは価格帯は4万円台~7万円台(コードバンモデルを除く)と昨年登場したばかりのマスターリガールと立ち位置がかなり被っているように見えます。
正確に言えば、マスターリーガルはリーガルブランド内の一つのラインで、シェットランドフォックスはリーガルとは別ブランドという扱つかいなので、違うといえば違うのですが、今のところコンセプトと価格帯はほぼ同じ。
リーガル社がこの2つの棲み分けをどうしていきたいのかは正直よく分かりません。
とりあえずはシェットランドフォックスは従来通り玄人向け、マスターリーガルはライト層にも訴求できるように積極的なプロモーションを展開するといった感じですかね・・・。
将来的にはブランドの統合や価格帯の棲み分けが行われるかもしれませんが、まずはマスターリーガルをしっかりと成熟させてからのお話です。
まとめ
後半は素人の戯言でしたが、リーガルが目指すべきは趣味性に特化した路線の強化ということは間違いないと思います。
だからこそ「マスターリーガル」と「ニュークラシック」の登場は必然だったと思うし、一時的なコレクションとして終わらせることなく継続して、リーガルの屋台骨へと成長することを期待しています。
なんだかんだでリーガルはお気に入りのブランドなので今後の動向にも要注目です。
今回は以上です。