
皆さんはシャツを選ぶ時にどのようなポイントを確認されますか?
首回り?身幅?袖丈? 確かに全部大事だと思いますが、私はそれらと同じくらい重視している箇所があります。それはカフス幅、つまり袖口の広さです。
既成品だとネックサイズさえ合わせていれば、カフス幅が極端に合わないということはほぼありませんが、突き詰めるとかなりシビアなフィッテイングが必要となります。やっかいなのは腕時計の存在です。一般的に時計はシャツの裾口に収めるべきとされていますが、それを基準に合わせると別の不具合が生じてしまいます。
試行錯誤を重ねてきましたが、今年に入ってようやくこの問題に対しての答えを出すことができましたので、シャツと腕時計の関係について、自分なりに思うことを述べていきます。ではどうぞご覧ください。
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【前提】シャツの袖口はタイトめジャストフィットが望ましい

タイトめにフィットした袖口
シャツと時計の関係性について述べる前に、前提としてシャツ単体で考えた時のフィッテイングについて触れておきましょう。
フィッテイングの好みは人によるのは承知の上ですが、やはり理想としてはタイトめジャストフィットになるかと思います。具体的には指が1本入るぐらいの隙間です。
おそらく市販されているシャツは多くの人に合うようにもう少しゆとりのある設計になっているはずなので、慣れてない方からすれば窮屈そうに感じるかもしれませんね。
しかし一度タイトに絞った袖口のシャツを経験すればその意味はお分かりいただけるかと思いますが、手首に吸い付くようにフィットしたカフスは実に着心地がよいものです。

理想的なバランスでジャケットから覗く袖口
また、袖口がしっかりと手首で止まることによって、袖丈を長めに設定することが可能となります。シャツの袖は先端がジャケットから1cm程度見えているぐらいが美しいとされていますが、カフス幅が広すぎると袖はずるずると下がってきて不格好で、逆に袖丈だけをぴったりと合わせても腕を動かした際に袖口がずり上がってしまいこれまた不格好になってしまいます。
そのため着心地の上でも見た目の上でも袖丈を長めに取って、カフス幅をぎゅっと絞る設計が理想とされているわけなのです。
シャツの袖口と腕時計の関係性について
ひと昔前と比べると腕時計の存在意義は薄れ、私服はもちろんスーツスタイルでも時計は着けないという方も多いのではないでしょうか。一方、男性に許される数少ない装飾品という側面もあるので、私のように装いを組む上で時計は不可欠と考える層も一定数います。
その際に気になるのはシャツの袖口と時計の関係性についてです。いくつかの流派(!?)というか考え方があるかと思うので、まずはそれぞれのメリット・デメリットを挙げていきます。
時計を袖口で隠す

フォーマルシーンにおいてはこれが正解。理由は諸説ありますが、宴会の席では時間を気にしないで過ごすことがマナーとされているので、腕に巻いた時計がこれみよがしに見えていのは好ましくないとされています。
「大枚はたいて買った自慢の時計が見ないと意味ないじゃん」と思われるかもしれませんが、隠れているのは腕を真っすぐに降ろした時だけで、ちょっとした動作でカフスが上がって時計がチラッと見えるので、分かる人にはちゃんと伝わります。高級時計を身に着けるなら、それぐらいが品があるってものです。個人的にもドレスウォッチを巻く場合はこのバランスを理想としています。
時計を袖口からはみ出す

袖口に時計を収めることを諦めて、盤面が完全に外から見えている状態。現代では40mmを超えるサイズの時計が主流なので、何も気にせず既成シャツに袖を通すとこのような様になりがちです。
ただ、ビジネス用途であればフォーマル程厳格ではないので、別にこのような着用方法でも問題ないという意見も多いようです。実際にいくつかのテーラーやドレス系セレクトショップのスタッフに質問した際にもそのような回答が返ってくることもありました。私が思うほど世間では「時計は袖口におさめなくては」と頑なには考えてはいないのかもしれません。確かに画像のようにボリュームのあるスポーツウォッチをあえて合わせるならこうした方が自然ですね。
時計をシャツの上から着ける

あまり見かけないかと思いますが、シャツの上から時計を巻いてしまうといった装着方法もあります。言わずと知れた重鎮・赤峰 幸生氏がこの着け方をされていることもあって、メンズクラシック界隈では割と好まれる傾向にあるようです。
確かに理に適っているかと思います。カフスを目一杯絞っても時計が干渉することなく、袖の先端もジャケットからバランスよく見えるはずなので。
ただ、個人的には少し難しいかなというようにも感じています。上手く言語化できませんが、私を含む「普通の人」がこれをするとおそらく不自然に映るでしょう。
そもそも腕時計が普及した頃はこの巻き方が主流だったそうなので、むしろより正統派になるのかもしれませんが、現代においてはクラシックすぎるという印象を受けてしまいます。サスペンダーと似たような感じですね。なので、違和感なくサスペンダーを装いに取り入れられるようなクラシックスタイルが自然と板についた方であれば全然ありなのかなと思いますよ。
理想のバランスに向けての試行錯誤(鎌倉シャツの場合)
前項での述べた通り、私としては時計はシャツの袖口に収めたいと考えています。カジュアルの場合はそこまでこだわりませんが、少なくともスーツやジャケットと合わせる際にはきちんとしておきたい。とはいえ単にカフス幅を大きくして時計が入るスペースを確保すれば良いというものでもないから難しいのです。
最初のうちはある程度妥協していましたが、当ブログでもおなじみの鎌倉シャツを実験台として、これまで試行錯誤を重ね、ようやく自分なりの正解に近い形を見つけることができました。
ここではその過程をご覧いただきながら、私なりの最適解について説明します。

なお、私も複数の時計を所有していますが、その中でもドレスウォッチとしては最も大ぶりなフレデリックコンスタントのムーンフェイズを基準として進めていきます。こちらの時計のサイズは直径40mm 厚さ10mmと現代の基準だと割と一般的な大きさとなり、皆さんも似たようなサイズ感の時計を1本ぐらいはお持ちではないでしょうか。

参考までに私の手首のサイズは約16cmとなっています。日本人成人男性の平均が17cm程らしいので少し細めとイメージしてください。ちなみに左利きのため参考画像では右手に時計を巻いています。
既成品マイサイズ
■右(時計あり):21.5cm

■左(時計なし):21.5cm

まずは以前買っていた既成品マイサイズ(40-84) 。ネックサイズはもう1つ下の39がベストなのですが、袖丈が合わないため仕方なく1サイズ上げていました。その影響もあってか時計は袖口にギリギリ収まっているものの、反対側の手はだいぶ隙間ができていますね。
これ以降はオーダーになるのですが、この既製品を基準に左右それぞれどのように調整を入れたのか併記していきます。
オーダー①
■右(時計あり):21.5cm ±0cm

■左(時計なし):21.0cm -0.5cm

鎌倉シャツで初めてオーダーした1着。ベースは既成品の「40-84」になります。本当は時計を着けない左手をもう0.5cm絞るか、若しくは時計を着ける右手をもう0.5cm広げておきたかったのですが、フィッティングを担当された店員さんから「左右差が1.0cm以上になるとバランスが悪くなる」とのアドバイスがあったので、それに従った次第です。
それまでは如何に時計を袖に収めるか、反対側の腕は如何に袖口を手首にフィットさせるのかだけを考えていましたが、左右差のバランスという問題があることも認識させられました。
オーダー②
■右(時計あり):21.0cm -0.5cm

■左(時計なし):20.0cm -1.5cm

前回のオーダーの際には特に時計を着けない左手の隙間が気になっていたので、ここをさらに1.0cm絞りました。その甲斐もあってフィット感はほぼ満足のいく出来です。
ただ、初回のオーダーで指摘された左右差を気にするあまり、時計を着ける左手側も合わせて0.5cm絞ってしまったのが完全に失敗でした。ご覧の通りカフスにケースの形がはっきりと浮き出てしまいます。これだと手で無理やり押し込まない限り、袖口の中には収まりませんね。
結局、3つの要素(時計の収まり方、手首のフィット感、左右差のバランス)で優先順位をつけてどこかは妥協しなくてはなりません。
オーダー③
■右(時計あり):22.0cm +0.5cm

■左(時計なし):21.0cm -0.5cm

色々と考えましたが、私にとって優先すべきはやはりシャツの袖口に時計がきれいに収まることです。最初の既成品の段階でも一応時計は袖口に入ってはいましまが、少し引っかかる感じがあったので、それをベースに0.5cm広げでみました。そのおかげもあって腕を垂直に下げるだけで、時計は自然に袖口へと滑り込んでいくようになりました。これなら不満はありません。
一方で反対側の時計を着けない左手は妥協します。既成品から-0.5cmということで最初にオーダーしたシャツと同じ数値ですね。決してフィット感は高くはありませんが、手首の位置で袖は留まって下にずり落ちてくる心配はないのでヨシしとしておきましょう。

また左右差も1.0cmということであれば見た目の上での違和感はほぼないかと思います。ただ、これ以上は厳しい。自分でピン留めして左右差1.5cmと2.0cmのパターンを試してみましたが、個人的には許容できる範囲ではありませんでした。なんというか見た目以上に手首周りの感覚の違いに強烈な不快感を覚えました。
まとめ
シャツと時計のバランスについては人によって様々な考えがあるのでしょうが、私としては試行錯誤の結果以下のようになりました。
- スーツやジャケットにドレスウォッチを合わせる際には袖口の中に収めたい。
- 腕を垂直に下ろしただけで、生地に干渉することなく時計が袖口に滑り込む余裕のあるカフス幅が理想。
- 時計を着けない側の袖口はできるだけタイトに絞りたい。
- ただし、左右差が1.0cmを超える場合は見た目や着用感に違和感が生じる可能性があるので要注意。
こんな感じでしょうか。
0.5cm単位の細かい話になりますが、こういうポイントをひとつずつ解消していくと装いの完成度を高めることに繋がると思いますのでご参までに。
そもそも時計をシャツの袖に収めたいのであれば、もうひと回りは小ぶりなサイズを選ぶべきでしょうね。
今回は以上です。