
年齢を重ねると昔は苦手だったものを急に克服することが稀にあります。ファッションにおいても同じで、私の装いには欠かせないローファーも実は7~8年前までは避けていたアイテムでした。革靴なら紐靴一択だろうと。それが今となっては年の半分以上はローファーを履いているぐらいなので、人の嗜好なんて軸があるようで割と簡単にブレるものなんです。
そんな心変わりがここ最近でも起こっています。それがインナー白Tのレイヤードです。インナーは絶対に外には出さないことを信条にしていたので、オンオフ問わずユニクロのエアリズムVネックを愛用していましたが、カジュアルな場面なら別にいいかなとふと考え直すようになりました。特に理由はありませんが。
ただ、このチラ見せ用の白Tに何を選ぶべきかが結構悩ましい。トップスとして使うような普通のTシャツだとごわつきそうだけど、かといって単に下着がはみ出していると思われたらそれは失敗です。要するに下着以上トップス未満のTシャツが望ましい。
私なりに色々と調べた上で出した1つの結論がHanes(ヘインズ)のゴールドラベルパックTでした。なぜこのTシャツがレイヤードに向いているのか。その理由と合わせて購入品をご紹介します。どうぞご覧ください。
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ヘインズについて

1901年、アメリカ・ノースカロライナ州にてプレザント・ヘンダーソン・ヘインズとその弟ジョン・ウェスレイにより、紳士用アンダーウェアを製造する会社「P・H・ヘインズニッティング社」として創業。1913年に発売された革新的なワンピースタイプのアンダーウェア「ユニオンスーツ」のヒットを足掛かりに全米での人気を集めるようになりました。
1940年代に入るとアンダーウエアだけでなくトップスとしても着られるTシャツも手掛けるようになりました。今と違ってTシャツはあくまでも下着で、1枚で着て出歩くのは恥ずかしいという風潮があったそうですが、ヘインズはその情勢を変える一端を担いました。ジェームズ・ディーンが映画「理由なき反抗」で見せた白Tとジーンズを合わせたスタイルがあまりにも有名ですが、そこで身に着けていたTシャツこそがヘインズのものだったとされています。
1947年には毎日を快適に過ごしてほしいとの願いから、複数のTシャツをリーズナブルな価格で提供するためにパックTシャツを開発します。「衣類をパッケージに入れる」という当時はなかった斬新な発想で広く受け入れられ、今となっては世界中のスタンダードになっています。
その後も様々なアイテムを生み出し続けてきたヘインズですが、現在は主に以下のシリーズが展開されています。
■レッドラベル パックT
昔ながらの製法で作られた最も安価でベーシックな3枚組パックT。着用を重ねると首回りはヨレ、ボディはクタっとした風合いへと変化していきますが、それを魅力と捉えるファンも多く、長年愛されたきたヘインズの代名詞。生地は薄手のためインナー使いを想定しています。
■ブルーラベル パックT
基本的にはレッドラベルと同じですが、こちらの生地ではコットンにポリエステルを混紡しているため速乾性に優れ、張りの感じられる質感となっています。
■ゴールドラベル パックT
今回購入したパックT。レッドラベルをベースとしながら厳選した素材を使用して編み方も工夫された上位モデル。詳しくは後述。
■ジャパンフィット パックT
日本人向けにスリムシルエットに調整された2枚組パックT。生地は5.3オンスとそれなりに厚手で、着丈も短めとなっているためトップスとしても着用することは可能となっています。
■ビーフィー
いわゆるヘビーウェイトTシャツの走り的な存在。6.1オンス。こちらは完全にトップス用となります。
■SHIRO
「最高の白T」をコンセプトに開発された2023年発売の新しいモデル。生地は7.0オンスとビーフィーよりも厚手でこちらもTシャツ1枚で着ることが前提となっています。今年に入ってから色違いの「KURO」も仲間入り。
他にも様々な用途に応じたバリエーションがあるヘインズのTシャツですが、なぜ本品(ゴールドラベル)を選ぶことになったのか次項で解説します。
ヘインズのゴールドラベル パックTをレビュー
概要

ヘインズ伝統の3枚組パックTシリーズ。これみよがしにタグが付いていないことが強調されていますが、当時は活気的なアイディアだったのでしょうか・・・。
厳選されたプレミアムコットンを100%使用。太さの異なる2本の糸で編む交編という製法により表面に凹凸が生まれ肌離れがよくなっています。レッドラベルのナチュラルな風合いとブルーラベルの機能性を併せ持ったモデルです。
3パックTの最上位モデルという位置付けですが、それでも定価は3,520円、1枚あたり1,173円と非常にリーズナブル。

シルエットはアメリカンなボックス型。着丈も長めに設定されています。
レッドラベルと比べるとしっかりとした生地となっていますが、あくまでもインナー(下着)としての使用が前提となっているTシャツのため多少の透け感があり、シルエットも決して洗練されているわけではありません。これを1枚で着る人もいるようですが、普通の日本人にはハードルは高そうです。
ディテール

ふんわりと柔らかく肌触りの良いコットン100%の生地。プレミアムを謳うだけあってそれなりに上等な素材を使っているようですね。吸水性も高くインナーとしては申し分ありません。
目を凝らしてご覧いただくと表面に凹凸があることがお分かりいただけるでしょうか。肌離れがよくなるという機能面はもちろんですが、ニュアンスが加わることで如何にも下着っぽい生地とは上手い具合に差別化できているように感じています。

生地を手のひらで広げ照明をかざした状態です。スケスケとまでは言いませんが、条件が揃えばそれなりに透けますね。

意外にもしっかりとした首元のバインダー。トップスとして着用する一般的なTシャツと比べても厚みやテンションはさほど変わらなさそうです。

こちらはTシャツの側面の様子。丸胴編みを採用しているため、ご覧の通り縫い目がありません。素肌で直接着用することになる服なので、縫い目の有無は着心地に直結します。

袖口や裾は表から縫い目が見えにくいブラインドステッチ仕様。

裏返してみると各所の縫製もそれなりに丁寧に処理されていることが分かります。安価なアメリカブランドなので、そこら辺はもっと雑なのかなと勝手に思っていました。これまた意外ですね。
サイズ感とシルエット

身長173cm 体重65kg 標準体型の私が購入したのはMサイズ。ヘインズはアメリカのブランドですが、日本で流通している商品はサイズ表記も日本基準なのでいつものサイズで問題ないかと思います。
直線的なボックスシルエットで、着丈はタックインしても裾が飛び出さないようにしっかりと長め。ただ、コットン100%の宿命で洗濯するとかなり縮むので要注意。
洗濯後の縮み具合

ということで1回目の洗濯をした後の縮み具合を確認してみましょう。未使用の同じTシャツを重ねているので分かりやすいかと思いますが、着丈-4cm 身幅-2cmとなりました。特に着丈の方はなかなかですね。ちなみに記録は取っていませんが2回目以降はそこまで極端な縮みはなかったはずです。

レッドラベルだと一度洗濯しただけで首元がヨレてしまい、それも味としてとらえられることまあるようですが、本品は全くその気配すら感じられません。
レイヤードに適している理由
ここまでご紹介した内容を踏まえ、なぜヘインズのゴールドラベルがレイヤードにてきしているのか解説します。
■インナー向けとしての作り
あくまでもシャツやポロシャツの中に着るインナーなので、主役となるトップスの邪魔になることは避けなければなりません。同じヘインズのTシャツでもビーフィのようにがっしりとした生地だとシルエットの崩れやごわつきが生じる可能性があります。ただ、ゴールドラベルはあくまでもインナー向けとして作られているので、その辺の問題は当然クリアしているわけです。
■トップス見えする生地感
インナー向けとして作られていゴールドラベルですが、素材や編み方が工夫されていることもあり、レッドラベルのような如何にも下着っぽい生地とは違い、遠目だとトップス見えします。つまり下着がはみ出ているだけの人に思われにくいということ。
■しっかりとしたバインダーネック
インナー向けなのでボディはそれなりに薄手の生地となっていますが、首元のバインダーに関してはだいぶしっかりと作られています。レイヤードさせる際には最も目立つ箇所なので、トップス見えするという点においては重要なポイントです。
■絶妙な開き具合のクルーネック
しっかりとした作りだけではなく、ネックの開き具合も実に絶妙。クルーネックのニットやスウェット度合わせる際に、インナーの首元が開きすぎたら外から見えずに、詰まりすぎたら今度は見えすぎてだらしない。あくまでもチラ見せが理想となりますが、図らずもこのモデルはそれを実現してくれます。
■ヘインズブランドの安心感
これはどちらかというと心理的な問題。どんなにトップス見えすると言い張ってもやはりインナー向けであるという事実は変わりません。ただ、ファッションの歴史の中でヘインズのパックT(主にレッドラベル)をあえてトップスとして使われることもあったというのもまた事実です。
要するにヘインズブランドならインナー向けでも人に見せても恥ずかしくないという免罪符のようなものがあるように感じます。CMの綾瀬はるかのようにブラトップ1枚で外に出歩くのには抵抗はあるけど、チラ見せなら気にならないようなものでしょうか。違うか。
着用例
最後にヘインズのゴールドラベルを使ったレイヤードスタイルの例をいくつかご紹介します。

まずはボタンダウンシャツ。これをしたいがために買ったようなものです。第二ボタンまで開けるときれいに襟が立つのですが、素肌で胸元を広く見せるのは少し恥ずかしい。というかキャラじゃない。そこで白Tチラ見せというわけです。

最近購入したサンスペルのスウェット。ものにもよるのでしょうが、クルーネックのと合わせた際に両端だけ白い生地が少しみえるバランスは理想的。

こちらも直近で購入したラコステのロングポロシャツ。UA別注で襟がきれい開くように前立てが1枚仕立てに変更されているのですが、その意図に沿うのであればこういう着こなしが良いのでしょうか。白Tなしだと難しそうですね。

ラガーシャツもボタンを留めずにガバっと着てみたかったので、白Tレイヤードだと自然な感じでまとまります。

シャツアウターを羽織って。ただこれは個人的にはNG。何度も言及している通りこのTシャツの本領はインナー使いにあります。チラ見せならともかく、ここまで露出するのであれば用途違い。大人しくトップス用のTシャツを流用した方が無難です。
まとめ
レイヤード用に購入したヘインズのゴールドラベルパックTをご紹介しました。
インナーの 白Tを少し見せるだけなんですけど、意外と着こなしの幅が広がって面白いものですね。
他にもっと良い白Tがあったのかもしれませんが、とりあえずやってみる分には価格の面でも、入手性の高さからしても間違いのない選択肢の1つになるかも思いますよ。
あまり語られることがない気がしますが、皆さんはどのようなTシャツを使っているのでしょうか?
今回は以上です。