
今年の1月にファイブワンでオーダーしていたスーツが完成したので、先日受け取ってきました。
スーツを新調するのは実に3年振り。やっぱりスーツって良いですね。袖を通すと背筋が伸びる感覚はジャケットとまた違ったものがあります。
今回のスーツは普段使いではなく、式典などの特別な日に着用することを想定して仕立てた一着となっていますので、その点を踏まえてご紹介していければと思います。
それではどうぞご覧ください。
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概要

特別な日に相応しい、シックな雰囲気を纏うチャコールグレーの3ピーススーツ。単なるダークスーツだと無難なビジネスウェアにしか見られない可能性もありますが、そのように感じさせないのは、遠目にも上質さが伝わる生地の光沢によるところが大きいでしょう。
使用した生地はDORMEUIL(ドーメル)の「AMADEUS 365(アマデウス365)」。光沢感といっても色気や艶めかしさを強調するものではなく、落ち着いた品の良さを感じさせてくれる輝き特徴です。これ見よがしに強く主張するわけではないものの、光の当たり方によって静かに表情を変え、チャコールグレーに奥行きを与えてくれます。

ハウスモデルは直近数着のジャケットで採用した「MBLS」。太めのラペルと低めに設定されたボタン位置が特徴的で、いくつか用意されているパターンの中でも特にクラシカルな趣が強いモデルです。
シルエットは細身へ振ることなく、かといってクラシック趣味を前面に打ち出すこともない、中庸と呼べる範囲で適度なゆとりを持たせています。ディテールについても同様で、流行的な要素は極力排し、長く着続けられる仕様を選択しています。日常的に着るスーツではないからこそ、10年以上の長期スパンでの付き合いとなる可能性が高く、数年後に見ても違和感のないバランスを意識しました。
出番は多くても1年に片手で数えられる程度でしょうか。それでもいざという時はこのスーツさえあれば困ることはない、そう思わせてくれる安心感があります。まさにワードローブの切り札的な一着となりそうですね。
ディテール

上品な光沢と仕立て映えするハリコシが特徴のDORMEUIL(ドーメル)の「AMADEUS 365(アマデウス365)」。その名称からも分かる通り、260g/mと通年の着用に適した生地となっています。
一般的に光沢の強い生地といえば、Super140’sやSuper180’sなど極細の原毛が使われるイメージですが、この生地ではSuper100’sという一般的な細さでありながら、確かな輝きを纏っています。これは単に原毛の細さに依存したものではなく、糸の均一性や高密度な織り、そして丁寧な仕上げによって生地表面が整えられていることに起因します。繊維一本一本の細さで艶を出すというよりも、面としての整いによって光を美しく反射させているのだそうです。
そのため、ロロピアーナやゼニアに代表されるイタリア製の高番手生地に見られるような、しっとりとした色気のある光沢とはやや趣が異なります。この生地はどちらかと言えば、英国的な品格を感じさせる端正な光沢感です。(ドーメルはフランスのブランドですが、生地はイギリス製。)

この生地は光の当たり方によっても映り方が大きく変わる点も特筆すべきポイントです。上の画像は屋外で太陽光の下で撮影しました。

ラペルの幅は約9.5cm、ゴージラインもやや低めに設定されており、クラシカルで落ち着いた印象を与えてくれます。

打ち込みのしっかりした生地のため、ラペルのロールもきれに出ていますね。

平置きだと少し伝わりにくいですが、首周りを包み込むように上襟が立体的に仕上げられてします。これは業界で「殺し」と呼ばれるアイロンワークによって、生地を人体のラインに沿うよう成形する工程によるもの。着心地に直結する重要な要素で、ジャケットの出来を大きく左右するといっても過言ではありません。
その点では、ファイブワンは実力のある自社ファクトリーが仕立てているということもあり、完成度はさすがの一言。上襟の収まりひとつを取っても、丁寧な仕事ぶりがしっかりと感じられます。

今回はある程度は構築的なスーツを目指していたということもあり、肩パッドは入れています。とはいえパッドも薄手のものが使われているので、着心地や見た目に大きな影響が出ることはありません。

本水牛のボタン。コンセプトからしてボタンが目立ってもいけませんので、生地の色味に馴染む最も黒に近いものを選んでいます。

サイドポケットはフラップなしの両玉縁。ドレッシーなスーツのジャケットにはフラップは不要というのが私の考えです。

袖口は重ね4つボタン。本切羽は標準仕様です。

裾の形状はオーソドックスなレギュラーカット。カジュアルなジャケットなら開きの大きいラウンドカットを選ぶことが多いですが、このスーツに軽快さは不要です。

通年用ということもあって、裏地は無難に総裏にしています。色味も冒険することなく、表地に合わせてグレーを選びました。若い頃なら裏地をネイビーやボルドーあたりにして洒落っ気を出そうとしていたかもしれませんが、もういい大人なので。

次はベストを見ていきましょう。そもそも3ピース自体が久々で、ベストに関してもそこまでこだわりがないので、最もベーシックであろうシングルブレストのラペルなしを選んでいます。強いて言えば両胸にもポケットを付けた配置は指定したポイントです。

背面はジャケットの裏地と共通となります。後述しますが、今回はややゆとりのあるフィッテイングとなっているので、アジャスターは単なる飾りじゃなくて、しっかりと使うことになる予定です。

最後はパンツをご覧いただきます。メンズドレスにおいて、パンツのシルエットは最もトレンドの影響を受けやすい要素となりますが、先にも述べた通り、いつの時代でも通用する普遍性を重視していたので、裾幅は太すぎず細すぎない20cmに設定しています。まさに普通。普通すぎて既製品だとあまり見ないかもしれません。(19cm以下、若しくは21cm以上が多いイメージ。)

腰回りは1プリーツを採用しました。一昔前ならすっきりとしたノープリーツ、最近はクラシカルな2プリーツが人気ですが、そのどちらが主流の時代になっても違和感を持たれないのはやっぱり1プリーツとなるのでしょう。
強いて言えば、サイドアジャスターや持ち出しロングは、一般的には普通じゃないのかもしれませんが、どうせベストで隠れるので、そこは気にする必要はありません。ベルトレスにすることでベストとスラックスの繋がりがよりきれいに見えるというメリットもあるので、3ピーススーツを仕立てる際にはサイドアジャスターがおすすめです。

裾はいつも通りダブルの4.5cmにしています。
シルエットと着用イメージ
■ジャケット

ジャケットに関しては基本的にここ数年でオーダーしたものと同じフィッテイングです。ベストを挟むことを考えて、身幅やウエストを若干広げたような気もしますが、見た目や着心地に変化が生じる程ではありません。
着心地はこれまで同様に素晴らしいファイブワンクオリティ。襟が首元に自然と吸い付くように収まり、肩周りも生地がしっかりと乗る感覚がある、安定したフィッテイングです。シルエットは身体に沿わせすぎず、適度なゆとりを持たせることで、無理のないドレープが生まれます。

3ピースということで、前は開けたままで着ることが多いかと思いますが、ボタンを留めてもシルエットはきれいに出ています。
ちなみに合わせている白シャツはだいぶ前に購入した間に合わせのものなので、カフスが見えていないのは気にしないでください。このスーツのためのシャツもオーダー中なので、手元に届いたら改めてご紹介しますね。

少し角度をつけてご覧いただくとこんな感じ。胸元からウエストにかけての流れるようなラインは特にお気に入り。ふんわりとしたラペルのロールもきれいで、全体の印象を上品に引き上げてくれます。

余計なシワの入らない、美しい後ろ姿。身体に正しくフィットしたジャケットは、背中にこそ差が表れるものです。着丈はヒップをしっかりと覆う、十分な長さに設定しています。
■ベスト

ベストの着丈は、ベルト(ウエストバンド)がしっかり隠れる長さを確保しつつ、股上の深いパンツの特性を活かして、あえてややコンパクトに設定しています。過度に着丈を長くしないことで視覚的なウエスト位置が上がり、全体のバランスが整い、スタイルアップ効果も期待できます。ベストとパンツの繋がりも至って自然な感じですね。
身幅に関しては、ジャケットの中でもたつかないように、ややタイトめに合わせるべきだとされています。一方でベストの場合、ジャケットと違い縫い代がないため基本的には身幅を出すことができません。何度か述べている通り、今回のスーツは着用頻度が低い代わりに、長い付き合いとなる予定です。そうすると私自身が40代50代を迎えた時に体型が多少崩れる懸念もあるので、ある程度の余裕を持たせた設定としました。
流石にそのまま着ると生地が浮くような感覚が気になってしまいますが、背中のアジャスターを3~4cmぐらいギュッと絞ることで、十分なフィット感を得ることができています。
■パンツ

パンツにもいくつかのハウスモデルが用意されていますが、その中でも最も股上が深い型を選んでいます。昨年オーダーしたリネンパンツと同じモデルですね。ウエストの位置はおへその辺りに合わせて、ハイウエスト気味に穿いています。
裾幅は20cmと中庸のド真ん中。1プリーツのゆとりある腰回りと相まって、時代を問わず通用する普遍的な仕様に仕上げています。また、膝幅との差寸を3.0cmに抑えることで、テーパードは控えめに。ストレートに近い、落ち着いたシルエットとなっています。
■全体

最後に全身をご覧ください。ジャケット・ベスト・パンツのシルエットが美しく繋がり、3ピースならではの一体感が際立っています。
過度な主張はなくとも、上質な生地と整えられたシルエットにより、全体で見ると確かな存在感を放ち、ハレの日に相応しい一着になっているかと思います。
まとめ
ファイブワンでオーダーした、特別な日のためのグレースーツをご紹介しました。
滅多に出番はないかと思いますが、「これさえあれば大丈夫」と思える一着は本当に頼りになる存在です。いざ袖を通すその瞬間に迷いがなく、自信を持ってその場に臨める。そんな安心感はなかなか得難いものです。
これから先、節目となる場面でこの一着を選ぶたびに、その価値を改めて実感していくことになるでしょう。
今回は以上です。