少し前に麻布テーラーのオーダースーツを数回に分けてレビューしました。
そこで、今回は私が過去に計4着をオーダーしたグローバルスタイルと麻布テーラーを複数のポイントから比較してみようと思います。
全国的に店舗展開をして知名度が高く、価格も手頃なためオーダースーツ初心者の方がお店を決める際の候補によく上がる両者の違いはどこにあるのでしょうか?
比較①店舗展開
オーダースーツ専門店としては屈指の店舗数を持つ両者ですが、まずは店舗展開から見ていきましょう。
麻布テーラー
全国26店舗
東京12店、札幌1店、横浜2店、埼玉1店、名古屋2店、京都1店、大阪3店、神戸1店、広島1店、福岡2店
https://www.azabutailor.com/blogs/tenjin
グローバルスタイル
全国23店舗
東京10店、札幌1店、仙台1店、横浜1店、名古屋3店、大阪3店、京都2店、福岡2店
https://www.global-style.jp/shop/fukuokatenjin
どちらとも東京を中心に全国の主要都市に出店しており、ほぼ似たような店舗構成です。
画像はいずれも私が利用した福岡天神の路面店ですが、店構えや雰囲気もそっくりですね。
比較②価格
オーダースーツの価格は「生地代+オプション」で決まることになります。オプションについては後程触れるので、まずは最終価格の大半を占める生地代で比較してみましょう。
以下、主要な生地ブランド別にスーツ(ジャケット+スラックス)を作る場合の価格です。同じブランドであっても一部は価格が異なる場合もあります。
◆最安値(国産生地)
麻布テーラー 40,000円(ウール100%)
◆CANONICO
麻布テーラー 70,000円
グローバルスタイル 68,000円
◆REDA
麻布テーラー 70,000円
グローバルスタイル 68,000円
◆CERRUTI
麻布テーラー 80,000円
グローバルスタイル 98,000円
◆DORMEUIL
麻布テーラー 90,000円
グローバルスタイル 100,800円
◆HOLLAND&SHERRY
麻布テーラー 80,000円
グローバルスタイル 100,800円
麻布テーラー 100,000円
グローバルスタイル 100,800円
◆LORO PIANA
麻布テーラー 100,000円
グローバルスタイル 100,800円
◆FOX BROTHERS
麻布テーラー 120,000円
グローバルスタイル 100,800円
モノによっては多少の差があるものの、パッと見た感じは大体同じような感じです。
ただ、グローバルスタイルでこの価格のままスーツを作る人はほぼいないでしょう。
というのもグローバルスタイルは何かと理由を付けて、「2着コンビフェア」というキャンペーンを実施しています。
生地ブランドによって多少異なりますが、2着オーダーすると1着あたりの価格が定価の60%程にまで下がります。
カノニコを例にすると1着の定価が68,000円のところ、コンビ価格だと1着あたりが44,000円になります。
https://www.global-style.jp/fair/202105/2chaku-combi/
このコンビフェアはあたかも期間限定のような広告がなされていますが、一年中通して実施されています。
「秋冬モノ先取りフェア」みたいなもっともらしいキャンペーンならまだしも、現在実施中の「名古屋店リニューアルフェア」みたいなのはさすが苦しいような…w
期間限定のように錯誤させる広告は、個人的にはあまり印象は良くないですが、お得であるのは間違いないですね。
同時に2着以上オーダーするのであれば、グローバルスタイルの方が基本的には安くなりますが、1着だけのオーダーであれば、麻布テーラーが価格の面で有利になるケースも存在します。
それはベスト付きの3ピーススーツをオーダーする場合です。
先程上記した価格はジャケット+スラックスの2ピーススーツの金額ですが、3ピーススーツをオーダーする場合、グローバルスタイルは生地代+35%と設定されていますが、麻布テーラーではベスト代は生地に関わらず13,000円でご固定されているのです。
例えば、100,000円の生地で1着だけ3ピーススーツを作るのであれば、グローバルスタイルは135,000円、麻布テーラーは113,000円がベースの価格となってきます。
生地代が高額になるにつれて、ベスト代が固定の麻布テーラーの方がお得になるということですね。
比較③生地
公式HPによると麻布テーラーは3,000種類以上、グローバルスタイルは5,000種類以上の生地から選ぶことができるそうです。
グローバルスタイルは母体が生地問屋なたげあって流石といったところですが、麻布テーラーも種類の豊富さは立派なものです。
また、一長一短ではありますが、サンプル生地の形式がそれぞれ異なります。
麻布テーラーはバンチブック形式をとっています。
バンチブックとは画像のように、ブランド毎に長方形に小さくカットされた生地が閉じろれた冊子のことです。
パラパラとめくりながら短時間で多くの生地を見ることができる反面、生地の面積が小さいため完成イメージがしづらいデメリットがあります。
一方グローバルスタイルではいわゆる「反物」の状態でサンプル生地を手に取ることができます。反物とは着物一着分を仕立てられる分量のことを指しているそうです。
参照;https://www.global-style.jp/enjoy-order/?p=20263
十分な生地量があるので、肩に乗せてたりしながら完成するスーツのイメージを膨らませていきます。ただ、物理的に保管スペースが限られるため、公式HPでは5,000種類以上と謳ってますが、実店舗にある在庫は多くみても1,000種類程だと思われます。まぁ、それでも十分なんですが椅子に座ってゆっくり眺められるバンチブックと違い、反物は自分が移動して生地を広げて回るので、思いの外時間がかかってしまいます。
個人的にはオーダー初心者の方は、店員の方に希望するイメージを伝え反物の生地をピックアップしてもらえれば、悩みすぎることも、完成形がイメージと外れすぎることもないのでおすすめします。
慣れないうちはバンチブックも結構難しかったりします。
比較④ハウスモデル
麻布テーラーとグローバルスタイルのどちらともオーダースタイルはパターンオーダーとなるので、ベースとなるハウスモデルを選ぶ必要があります。
以下、各モデルの説明文は公式HPより引用です。
たぶん、文章だけ見ても良く分からないので、飛ばして頂いて結構です。
麻布テーラー 全3パターン
https://www.azabutailor.com/order/suit/model/
英国のビスポークに影響を受けながら、イタリアならではの感性が融合された、戦うビジネスマンに最適なモデル。着心地を追及するための毛芯使いなどで柔らかな着心地です。
コンチネンタル
なだらかに傾斜したゴージラインと、適度に広いラペル巾、ウエストシェイプやポケット位置を低く設定する事によって落ち着いた雰囲気を表現した、大人っぽいヨーロピアン・クラシック・スタイルです。
ジェットクルーズ
オン・オフ対応できる新感覚のセットアップコンセプトのモデル。オン・オフでの着回し力を持たせる為、軽量化されたジャケットやカジュアルフィーリングを取り込んだディテールオプションをご用意しております。
グローバルスタイル 全9パターン
https://www.azabutailor.com/order/suit/model/
モダンクラシックモデル
ハイゴージ、ハイシェイプなどクラシックなフォルムでありながら従来より低めに設定された釦位置により深めのVゾーンを強調し、フロントのカッタウェイラインがエレガントさを表現しています。クラシックの部分とセクシーさを融合したモデルです。
モダンブリティッシュモデル
従来からある重厚な英国風仕立てを アレンジして薄めのパットやソフトな毛芯を用いています。 デザイン的にも高めの釦位置や強調された 裾のカッタウェイライン、スラントやチェンジポケットなど ブリテッシュスタイルの新しい息吹を体感して下さい。
アンコンモデル
肩パットや芯地を極力排したアンコン仕立てと、パッチポケットなどのディテールが、カジュアル感を強調しています。より軽さを追求したコンフォータブルな着用感を体感できるモデルです。ON/OFF共用できる、着回しのきくモデルです。
スリムフィットモデル
ナローラペル、スラントポケットなどのシャープなディーテールとコンパクトな着丈が醸し出すモードな空気感が、構築的なシルエットと確かな仕立て技術と融合され新しいモードスタイルを体感できるモデルです。
ヴィンテージクラシックモデル
60年代のマニッシュスーツの代表的なデザインの特徴である反り上がったショルダーラインとワイドラペルを採用。往年のフレンチモードを思わせるフォルムに現代的なソフト仕立てがミックスされ、単に回顧主義ではないモダンな仕上がりをお約束します。
ニュービスポークモデル
伝統的なサヴィルロウスタイルに新しい感覚を取り入れたこのモデルは、コンパクトな着丈とシャープなフロントのカッタウェイラインが特徴です。ディテール的にもフィッシュマウスラペルや構築的なショルダーラインなど、エッジの効いたピスポークスタイルを体感して下さい。
ミケランジェロサルトリア
ハイグレードラインに位置づけれたこのモデルは、上質な毛芯とマシンとハンドが絶妙に融合された仕立てにより生み出される極上の着心地感が特徴です。体を丸く包み込むような曲線の美を一度体感して下さい。
※こちらのモデルは+20,000円(税込22,000円)となります
ミケランジェロレジェロ
ハイグレードラインに位置づけられたこのモデルは、パットなどの内蔵物を極限まで削ぎ落として軽さを追求しています。体の一部であるかのような軽い着心地感をお楽しみ下さい。
※こちらのモデルは+20,000円(税込22,000円)となります
カイザーモデル
Kaiserはドイツ語で「皇帝」という意味。その名のとおり、最上級に位置づけされるこのモデルは、羽織るだけで首から肩に馴染み、重さを感じることがありません。柔らかさがありながらも胸部分は立体的で着用する人の体型を美しく綺麗に見せてくれます。是非一度、最高級のフィット感を体感してみて下さい。
※こちらのモデルは+20,000円(税込22,000円)となります。
※こちらのモデルは一部店舗でのお取り扱いとなります。
麻布テーラーはラペル幅やウエストシェイプの位置など、後から変更出来ない最低限の違いによる3モデルです。
一方でグローバルスタイルは全9モデルと数の上では圧倒していますが、肩パッドやポケットの仕様、ジャケットの着丈など、後からでも調整の効くディテールの違いにより別モデルを用意しているので、実際のところそこまで豊富なバリエーションが存在するワケではありません。
初めての利用であれば、上2つ(モダンクラシック・モダンブリティッシュ)だけを選択肢に入れておけば問題ないでしょう。
比較⑤ディテールオプション
オーダースーツの醍醐味であり、自分の趣味を反映させられるディテールの選択ですが、オプションの種類自体はどちらも豊富ですので、主要なディテールの金額を中心に比較してみます。
◆本水牛ボタン
麻布テーラー 3,500円
グローバルスタイル 2,000円
◆本切羽
麻布テーラー 3,000円
グローバルスタイル 2,000円
◆チェンジポケット
麻布テーラー 無料
グローバルスタイル 1,000円
◆裏地キュプラ
麻布テーラー 2,500円
グローバルスタイル 3,000円
◆フル芯地
麻布テーラー 標準仕様(ジェットクルーズ除く)
グローバルスタイル 5,000円(有料モデルは標準仕様)
◆襟裏折り返し(髭)
麻布テーラー 1,000円
グローバルスタイル 選択不可
個人的には麻布テーラーのフル芯地標準仕様は推しポイントですが、グローバルスタイルでも5,000円でハーフ芯地からフル芯地に変更可能なようですね。知りませんでした。
ハーフ芯地とフル芯地の違いは過去記事で書いたので、ここでは触れませんがジャケットを羽織った時の立体感が全然違うので、予算に余裕があればグローバルスタイルでもフル芯地を選択することをおすすめします。
※芯地についてはこちらの記事で
比較⑥着用感
着用感に関しては、その人の体形や主観によるところが大きいと思うので、あくまでもご参考程度に。
どちらともパターンオーダーといえ、サイズ調整はしっかりと行っているので、肩幅が狭いとかウエストが緩いということはないので、着心地という事に関しては肩回りの動きやすさが大きく影響します。
その点でいえば、麻布テーラーのジャケットは肩から胸にかけて立体感があり、全体的にタイトなフィッティングをしても肩回りの着心地は損なわれないように感じました。
グローバルスタイルもジャケットの肩回りには毛芯が使われているそうですが、麻布テーラーと比べるとのっぺりしていて、私の体にはいまいちフィットしていません。また、アームホールがやや大きめなこともあり、腕を動かすとジャケット全体が引っ張られる感じがあり、着心地にも影響してきます。
ただ、これは私が所有するグローバルスタイルのスーツ4着の中で3着の話です。
というのも、1着だけハウスモデルを有料(+20,000円)のミケランジェロサルトリアでオーダーしているからです。
有料となる3モデルのみ、国内工場で職人がハンドメイドと機械で縫製を仕上げ、芯地も高級素材のバス芯(馬の尻尾の毛)が使用されており、そのおかげか通常ラインのモデルと比べると明らかに立体感があり、羽織っただけで着心地の違いを感じられます。
私的な意見を言えば、グローバルスタイルの通常ラインでは麻布テーラーに着心地に関しては劣るが、有料のアップグレードラインであれば全く引けを取らないというところです。
麻布テーラーでも+18,000円でバス芯を使う仕様(サルトリア仕立て)に変更できるそうなので、それを経験しないと同じ条件(バス芯使用)での結論は決められないですね。
比較⑦コスパ
比較となれば、結局コスパで見ることが一番分かりやすいので、先日完成した麻布テーラーのスーツをほぼ同じ条件でグローバルスタイルでオーダーしたと仮定して試算してみました。
ちなみに麻布テーラーでの最終価格は77,000円(税別)です。
生地:カノニコ 68,000円(コンビ価格44,000円)
ハウスモデル:モダンクラシック 無料
本水牛ボタン 2,000円
本切羽 2,000円
裏地キュプラ 3,000円
チェンジポケット 1,000円
フル毛芯 5,000円
ということでグローバルスタイルでオーダーすると計81,000円となりますが、例のコンビ価格を利用すれば1着あたり57,000円まで下がります。
また、より良い着心地を求めて有料のハウスモデルを採用するのであれば、単体で96,000円、コンビ価格で1着あたり72,000円となります。
※有料モデルは+20,000円ですが、標準でフル毛芯となるので、フル毛芯のオプション5,000円が不要になります。
いずれにせよ、1着であれば麻布テーラー、2着以上であればグローバルスタイルがコスパに優れるということですね。
まとめ(結論)
長々と書いてきましたが、どちらも未経験の方からしたら必要な情報は、結局どちらがおすすめなのかということですよね。
まず、手持ちのスーツが少なく、オーダーが初めての方であればグローバルスタイルでコンビ価格の利用をおすすめします。
着心地が劣ると評しましたが、最初は通常ライン(無料のハウスモデル)で問題ありません。今までどのようなスーツを着てきたかにもよりますが、肩幅・身幅などのサイズが自分にフィットしたスーツはそれだけで十分に既製品との違いを感じることが出来るかと思います。
また、生地をバンチブックではなく、面積の大きい反物で見れることもオーダー初心者の方には利点になるでしょう。
着心地にもこだわりたい方は、麻布テーラーでまずは1着オーダーすることをおすすめします。
グローバルスタイルでも有料のハウスモデルを採用すれば、十分な着心地を体感できますが、その分当然価格も上がり、コンビ価格を利用したとしても1着あたりの金額は麻布テーラーとほぼ同等です。
であれば、いきなり2着ではなくまずは1着の方が安心ですよね。私は麻布テーラーのパターンにフィットしましたが、人それぞれ体の癖は違うので、中には合わない方もいるでしょう。
それにある程度社会人として年数を積んだ方であれば、スーツを2着も必要になることはあまりないですよね。私も今後は1着ずつで十分です。
いかがでしたでしょうか。
先日完成した麻布テーラーのスーツの出来に結構満足していたので、自分でも麻布テーラー推しの内容になるかと思っていましたが、やはりグローバルスタイルのコンビ価格は魅力的ですね。
ただ、何度も言いますがグローバルスタイルのネット広告には騙されないでくださいね。期間限定と見せかけて、「急がなきゃ!!」と錯誤させるのがここの常套手段です。焦らずにじっくり検討してください。
まぁ、かくいう私も最初はその戦略にまんまと嵌まったくちなのですがw
出来上がったスーツは悪くはないんですけどね。結局4着もオーダーしてますし。
色々主観も入っていますが、オーダースーツのお店選びで迷っている方の参考に少しでもなれば幸いです。
今回は以上です。