トラッドマンに憧れて

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麻布テーラーでスーツをオーダー!今回はサルトリア仕立てにも挑戦。【完成編】

9月初旬に麻布テーラーでオーダーしていたスーツが完成しました。

 

妻からは「地味だね」と評されましたが、それでいいんです。私としてはイメージ通りで満足な仕上がりになりました。

 

では、早速ご覧いただきましょう。

 

 

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完成したオーダースーツをレビュー

概要

基本的にはなんの変哲もないグレーのスーツ。ベスト付きのスリーピースでお願いしています。

 

色味としては「暗めのグレー」「明るめのチャコール」といった感じでしょうか。春夏だと少し重いですが、秋冬物ならこれぐらい落ち着いたトーンの方が使い勝手が良いですね。

 

ハウスモデルは麻布テーラー伝統のクラシコイタリアを選び、上級オプションであるサルトル仕立て」を採用しました。

 

サルトリア仕立てでは、通常だとジャケットの芯地に毛芯(ウール)と接着芯が併用されているところ、高級素材である本バス(馬の尻尾の毛)を身頃全体に通した総毛芯で仕立てられています。詳しくは後述しますが、芯地の仕様が異なると見た目、そして着心地に大きな影響を与えます。おまけにいくつかの有料オプションが含まれているので、追加料金分(19,800円)の価値は十分にあると感じています。

 

ちなみに今回の裏テーマとして英国式を意識しています。といっても本格的なブリティッシュスーツを目指したというわけではなく、生地の風合いやディテールでその雰囲気を再現してみました。

 

ディテール

生地はカノニコのサキソニーウールフランネルよりは毛足が短く、目付けも270g/mと秋冬としてはやや軽めな生地を選びました。

 

本音を言えばぎっちりと目が詰まったフランネルツイードでスーツを作りたいところですが、現在のライフスタイルを考えると着用期間が限られそうなんですよね。その点このサキソニーウールなら10月から3月中頃まで活躍の場を得そうです。季節感もしっかりと捉えています。

 

また、起毛素材とはいえほどよい光沢感も持っているので、ビジネス用としても使いやすい生地だと思います。「秋冬の季節感は欲しいけど、仕事用に起毛生地は少し抵抗があるなぁ」という方、サキソニーはおすすめですよ。

 

ラペル幅は8.5cm、ゴージラインの高さを含めて至って標準的。着目いただきたいのは胸元の立体感です。なかなか吊るしの画像では伝わりにくいのが残念ですが、ハリコシの強いバス芯を全体に通すことで、通常仕様と比べると明らかに構築的なシルエットに仕上がっています。

 

なくともいいけど、あったら嬉しい髭襟はサルトリア仕立ての標準仕様。

 

前回同様に肩パッドを通常の10mmから3mmに変更していますが、芯地の素材が違う影響かかっちりとした着心地です。

 

こちらも標準仕様の本水牛ボタンは生地と馴染みの良い、最も色味が深いダークブラウン。最初はもっと明るめのブラウンを選ぶつもりでしたが、シックに纏めるならこれで正解ですね。

 

袖のボタン付けは重ねでお願いすることが多いのですが、英国的であるのは並び付けの方ですね。まぁ、そんなことを言い出すと本切羽は邪道なんですけど、せっかくサルトリア仕立ての標準仕様に含まれてるのでお願いしました。前回も思ったのですが、麻布テーラーのボタンホールは処理がきれいなんですよね。

 

いかにも英国っぽいディテールといえばチェンジポケットですね。最初はチェンジポケット+スラントポケットにするつもりでしたが、流石に主張しすぎかなと思い大人しく平行にしておきました。

 

今回は秋冬用ということで総裏地。色は無難に生地と同系統色のグレー、素材は標準仕様のキュプラです。また、こだわりはないのですが同じく標準仕様に台場仕立てが含まれていたので、どうせならと一番豪華な丸台場でお願いしました。ちなみに内ポケットの配置は左利き仕様にカスタマイズしています。

 

ベントはいつも通りサイドベンツ。

 

ベストは最もベッシークな襟なしのシングルブレスト、2ポケットの仕様です。

 

背中にはサイズ調整用のベルト付き。これを外すこともできますが、尾錠がいいアクセントになって個人的に好きなんですよね。

 

ジャケットと比べると語りどころの少ないパンツですが、特徴的なポインは2つ。

 

まずは、ベルトルーフを廃してサイドアジャスターを採用していること。ここ数年、インポートのパンツ専業ブランドがこぞってサイドアジャスターのパンツを取り扱い、日本でもすっかり市民権を得ていますが、ビジネススーツとしては微妙なところです。

 

ただ、歴史的に見ればベルトを巻くという風習の方が後から生まれたものなので、サイドアジャスターやブレイシーズの方がより正統であるという見方もあると思うんですよね。もちろん、少しでも周りと違うことを良しとしない職場もあるので、そこは各自で見極める必要もあるかもしれませんが・・・。ちなみに私のところは「良しとしない職場」ですが、どうせベストで隠れるから別にいいかなと。

 

もう1つの特徴は腰回りのプリーツです。1プリーツのパンツなんてもはや主流じゃないかと思られそうですが、実はプリーツの向きが内側になっているんです。国内で流通している既成のプリーツパンツはアウトプリーツが一般的で、オーダーしても特に指定がなければ外向きに仕上がっているはずです。

 

大差はありませんが、インプリーツよりアウトプリーツの方が膨らみが少なくシャープなシルエットに仕上がるため、クラシカルなイギリス式ではインプリーツが、スタイリッシュなイタリア式ではアウトプリーツが好まれているようです。

 

どっちにしろ、そんなところ誰も見やしないのですが、そういったディテールの違いを楽しむのもオーダーの魅力ですね。

 

機能性を高めるVスリットとマーベルト(シャツ留め)もサルトリア仕立ての標準仕様となっています。ここら辺も普段ならわざわざ選んでいないようなオプションですね。

 

裾の仕上げはいつもの4.5cmダブル。5.0cmや4.0cmも試したことがありますが、私の体型と頭身だと4.5cmが最適と結論付けています。

 

着用感とシルエット

パターンオーダーとはいえ、プロのフィッターさんに採寸してもらっているので見た目のサイズ感はなんの不満もありません。適度にシェイプを効かせて高めに設定したウエストラインもイメージ通りです。程よくクラシック。プライベート用ならもう少しクラシック趣味が強く反映しそうですが、あくまでも仕事用なのでこれぐらいでいいんです。

 

さて肝心の着心地ですが、最初に袖を通しただけで前回との違いを即座に感じました。肩から胸元にかけての立体感が際立っているので、生地が身体の線に沿ってに自然に乗っかているという感覚があります。生地そのものは秋冬物としては比較的軽めな素材を使っているのですが、しっかりと裾までバス芯が通っていることで身頃全体に構築感が生まれています。麻布テーラーの通常モデルも満足度は高いのですが、このサルトリア仕立てを採用したことで明らかにワンランク上の着心地が実現しました。

 

こちらはバックショット。不自然なシワもなく、ウエストもきれいに出ていますね。ちょうどお尻が隠れるぐらいの着丈も理想的です。

 

最後にジャケットを脱いで、ベスト単体で。もしかすると「ベストの丈長すぎじゃね?」と思われる方もいるかもしれませんが、これでいいんです。ベルトのバックルがチラ見するぐらいがちょうどいいという意見も見聞きしますが、個人的にはベストとスラックの境界線が極力目立たないようにしたいので、これぐらいの長さが必要です。まぁ、そもそもベルトしてないんですけどね。

 

ちなみにベルトレスにすることで、ベストを生地を干渉する障害物がなくなり見た目がきれいになります。スリーピースでスーツを作る時はサイドアジャスターかブレイシーズ対応のパンツがおすすめです。

 

コーディネート

スーツ:麻布テーラー

シャツ:SOLVE(ソルブ)

ネクタイ:FRANCO SPADA(フランコスパダ)

靴:JALAN SRIWIJAYA(ジャランスリワヤ)

 

無地のグレースーツなんで、雑な言い方をすれば何を合わせてもそれなりに纏まります。ということで、ほとんど出番のないパープルのレジメンタルタイを持ってきましたが、全く違和感なし。懐の深さはさすが。

 

スーツ:麻布テーラー

シャツ:メーカーズシャツ鎌倉

靴: Berwick(バーウィック)

 

私の会社では通年ノーネクタイが推奨されているので、実は先程のようなタイドアップスタイルの方が稀だったりします。正直秋冬のノーネクタイはどうも締まりのない感じになってしまいますが、それを和らげてくれるのが三つ揃えのスーツだと思うんですよね。ブラウンのストライプシャツと同じくブラウンのドレスシューズを合わせています。

 

まとめ

冒頭から申し上げている通り、本当に普通のグレースーツです。だからこそ使いやし、ちょっとした遊びを入れる余裕も生まれるわけです。

 

それにしてもサルトリア仕立てを採用したことは大正解でした。芯地が違えばこうも変わるものなのかと感心するばかりです。私の中で麻布テーラーの評価も少し上がったような気がします。

 

軽やかな春夏向きのスーツや柔らかな風合いのイタリア的なジャケットを作る場合は不向きかもしれませんが、風格がありワンランク上の一着を目指すならサルトリア仕立てはおすすめですよ。

 

今回は以上です。