先日、大盛況の内に終わったWBC(World Baseball Classic)。一野球ファンとして、日本代表が優勝したことはもとより、普段は野球なんて見ない層のハートをがっちり掴めていたことが嬉しかった。
この調子でNPBとMLBにも興味を持ってもらえたら良いのですが、それはそれで難しいことですかね。
・・・いや、今回は野球の話じゃなくて、ここ日本ではとてつもなくマイナーな存在、でも服好きなら何かと縁のある競技「ポロ」について。
「馬に乗ってなんかするやつ」ぐらいの認識かと思いますが、あらゆるファッションアイテムやブランドのルーツとなっているポロというスポーツについて、服好きなら多少の知識は持っているべきかもしれませんよ。
ということで、興味のある方はお付き合いくださいませ。
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ポロにまつわるアイテムやブランド
まずはどれ程にポロという競技がファッションと密接な関係にあるのか、いくつかのアイテムやブランドを例にご覧いただきましょう。
ポロシャツ
参照:ラコステ L.12.12 ポロシャツ (無地・半袖) L1212AL - ラコステ(LACOSTE)公式オンラインショップ
テニスウェアとして誕生したポロシャツですが、そのルーツをさらに辿るとポロにあります。自身も著名なテニスプレイヤーでラコステの創始者でもあるルネ・ラコステ氏が、機能性の高いウェアを探し求めたいたところ、ポロで着用されていた吸水性の高いニット生地が目に留まりました。それに改良を重ね、現在に通じる鹿の子生地のスポーツシャツが完成します。故にテニスウェアでありながらポロシャツという名称が定着しているのです。
ポロカラーシャツ
参照:ポロカラーシャツ|TIMELESS CLASSICS|OUR STORY|Brooks Brothers Japan(ブルックス ブラザーズ ジャパン)
あまり聞き馴染みはないかもしれませんがボタンダウンシャツの別称です。その由来はボタンダウンシャツの元祖であるブルックスブラザーズがポロの選手が着用しているユニフォームの襟が風であおられないように、襟先がボタンで留められていることに着想を得たからなのだとか。
一般的にはボタンダウンシャツという呼び名が定着していますが、ブルックスブラザーズではオリジナルに敬意を払い現在でもポロカラーシャツの名で統一されています。
ポロコート
参照:キャメルヘア ダブルブレスト ポロコート (キャメル)|Brooks Brothers Japan(ブルックス ブラザーズ ジャパン)
ダブルブレスト、ターンナップカフ、バックベルト等のディテールが特徴的なクラシックコート。ポロの選手が休憩中や試合の前後に着用していたコートがルーツで、ポロカラーシャツ同様にブルックスブラザーズによって一般化されました。
レベルソ(ジャガールクルト)
参照:レベルソの魅力~ジャガー・ルクルトの誇る、反転ケースが独創的なマスターピース~ | メンズ ブランド腕時計専門店 通販サイト ジャックロード
スイスの名門 ジャガールクルトを代表するモデルであるレベルソ。その最大の特徴は画像のようにケースをスライドさせ反転するという一風変わったギミックにあります。実はこれもポロ由来で、競技中に風防を守るためケース自体を裏返しにしていたそうです。どうせ文字盤が見えなくなるなら競技中は時計を外せばいいのにとは思うのですが(笑)。
現代において実用性はほぼなく、お飾りでしかありませんが、この仕様を活かして両面で異なる文字盤を楽しめるレベルソ デュオというモデルも人気です。
てか、レベルソって今こんなに高くなってるのか・・・。
ポロ ラルフローレン
我々日本人がポロ競技について「馬に乗ってなんかするやつ」ぐらいの認識を持てているのは間違いなくラルフローレンの功績でしょう。このポニーロゴはあまりにも有名ですね。なぜラルフローレンがポロをモチーフにしたのか、その理由までは明確ではありませんが、一般的には「紳士のスポーツであるポロとブランドコンセプトに通じるものがあったから」といわれています。
U.S. ポロ アッスン
以前どこかで読んだネット記事に「今の若者にとってブランドの【ポロ】といえばラルフローレンではなく、ポロ アッスンだ。」と書かれていて驚いたことをよく覚えています。ラルフローレンの「パチモン」的なポロブランドは以前から数多く存在していましたが、安価な量販店やZOZOTOWNで取り扱われるU.S. ポロ アッスンがここ最近は躍進しているそうです。
ちなみにブランド名にもなっている「全米ポロ協会(United States Polo Association)」という歴とした団体から唯一公認を受けているそうなので、決して怪しいブランドではないと思います。それにしてもロゴのカラーリングや構図からして寄せる気満々ですな。
ポロってどんな競技?
では、ここからが本題。何かとファッションシーンに馴染みがあるポロという競技ですが、ほとんどの方がプレイしたこともなければ、その様子を見たことすらないはず。そして、その機会はおそらくこの先もないでしょう。
ならば、せめて概要ぐらいは知っておきたくないですか?
服好きなら何かと「ルーツ」って気になりますよね。
ポロの歴史
古来日本の「打毬」の様子
ポロのルーツは紀元前6世紀のペルシャにあり、騎馬軍事訓練としてインドや中国に伝播して発展を遂げ、ここ日本でも奈良時代に「打毬」として大陸から伝わりました。その圧倒的に長い歴史からポロは世界最古の競技の1つとされています。
現代に通じるポロのルールが確立されのは19世紀のイギリスで、当時植民地であったインドから持ち帰ったことをきっかけに、ヨーロッパ各国へと広がっていきました。
競技の概要
競技場は270x150mと、フットボールの9倍の広さがある。1チーム通常4人で構成され、メンバーは馬に乗り、マレットと呼ばれるスティックで球を打つ。この球を相手チームのゴールに運べば得点となる。試合時間は7分間の「チャッカー」(chukkas)と呼ばれる区切りに分けられ、1試合はチャッカー6回である。1人の選手は試合中4頭まで馬を替える事ができる。また、1頭の馬を連続する2つのチャッカーに続けて出すことは出来ない。
要するに馬に乗ってプレイするフィールドホッケーのような競技。ただ、スケールがとてつもなくデカいですね。サッカー場9面分というフィールドの規模もさることながら、解説文にある通り、2回連続で同じ馬を出場させられないという制約があるので、試合を成立させるためにはプレイヤー4名×馬2頭×2チームで最低でも16頭の馬を用意する必要があるというのだから、費用の面でも準備する手間の面でも本当にハードルが高いと思います。(実際には1名が4頭を用意することが一般的らしいです。)
ただ、試合時間は1時間~1時間半程度とそこまで長くないみたいですね。紳士のスポーツといえば試合中にティータイムを挟むクリケットのようにべらぼうに時間が長いイメージがあったので。
こちらはYou Tubeで拾った海外のプレイ映像。ボールが小さくて見えずらいのは難点ですが、かなりの迫力があります。これは一度現地で観戦をしてみたいものですね。
日本におけるポロ
ご想像の通りですが、日本ではほとんど競技者がいないという状況です。登録競技人口はわずか3名。1チームを構成する人数にも満たしていないので、それぞれが海外でプレーを行なっているようです。
名前の認知度と競技人口の乖離具合はカバティ以上ですね。(ちなみにカバティは国内で5,000人程の競技者がいるらしい。)
ここ最近になって「日本ポロ協会」なる組織が設立され、国内での競技普及を目指しているとのことですが、場所や費用の問題に加えて、そもそも欧米と比べると乗馬文化が身近でないこともあり、現時点では目に見える成果へと繋がってはいません。難しいですね。
なぜポロはファッションへの影響力を持ったのか?
日本と違いヨーロッパやアメリカ、アルゼンチン等で一定の競技人口があるものの、各国でもポロはマイナー競技扱いであることには変わりません。
でもその割にファッション文化への影響が大きいのがポロという競技。テニスやゴルフなどファッションと関連の深いスポーツもいくつか存在しますが、世界的にメジャースポーツとして認知されるそれらと比べるとポロはまさに異色。
なぜポロはファッションへの影響力を持ったのか。その理由はイギリスの階級社会が関係しているのではと私は考えています。
参照:レキシル[Rekisiru] - 歴史、それは最高のエンタメ。
イギリスでは中世に確立された階級社会が現代でも至る所で色濃く残されていることは有名な話で、大きく分けると上図のように「上流階級」「中流階級」「労働者階級」に分類されます。
日本に住んでいるとなかなか信じ難い話ですが、その影響は職業や学校、言葉遣い、さらにはスポーツにまで及ぶそうです。
ことスポーツに絞って話を進めると、階級に応じて子供の頃に選ぶスポーツの選択肢が変わってくるといわれていて、簡潔に図解すると下記のように分類されます。
上流階級の人々もゴルフは嗜みますし、労働者階級出身の有名テニスプレイヤーもいるので、必ずしもこの限りではありませんが、一般的にはこのように区分されると聞きます。
競技そのものというより、観戦スタイルを見ればなんとなく察しはつきます。テニス場やゴルフ場にフーリガンは現れませんからね・・・。それに階級が上がるにつれ用具にお金がかかるのも分かりやすい。
では、それがどうしてファッションに結びつくのかというと、全てのメンズファッションの源流はイギリスであり、そして装いの文化は常に「上から降りてくる」ものだからです。要するにメンズファッションは英国貴族(上流階級)の真似事が基本なので、彼らが好むポロで着用するシャツやコートを大衆(中流階級、労働者階級)が取り入れるというのは自然な流れだったのかもしれません。
そもそもポロシャツ(フランス/ラコステ)にしろポロカラーシャツ・ポロコート(アメリカ/ブルックスブラザーズ)にしろ、ファッションアイテムへと改良して一般化させたのは海外のブランド。彼らがポロ競技からヒントを得たのは機能性やデザインもさることながら「英国貴族の文化だったから」というのは重要なファクターになっていのではと推察します。
若干差別的な表現になってしまいますが、仮にポロが労働者階級のスポーツだったら、インスパイアの対象になることもなかったんじゃないですかね。
まとめ
以前から気になってたんですよね。ファッション関連でポロってよく聞くけど、海外ではそんなに一般的なスポーツなのか、そもそもどんなルールなのかなって。
最後の方は個人的な見解も含まれていますが、ポロが大体どんな競技で、ファッション文化との関連性の理解に少しでも役立てば幸いです。
商品レビューばかりじゃなくて、たまにはこんな感じの記事を書いてみるのも面白い。
今回は以上です。