カジュアルなジャケットスタイルのインナーはいつだって悩ましい。
秋冬であればタートルネックを選べば、まず間違いはないのですが、春夏はなかなか難しいところ。鉄板はポロシャツで、私は今年から春用のモックネックを取り入れていますが、他に何があるだろう?
もちろんシャツが最高に相性が良いことは承知していますが、どうしてもジャケットと合わせるお堅い雰囲気が強調されてしまうので、カジュアル用途であれば素材やディテールに気を付ける必要があります。
そこで目を付けたのがバンドカラーシャツ。シャツとして体を成していながら、襟羽根がないだけに適度なリラックス感があるのが良い。
ただ、一方でバンドカラーシャツは生地やシルエットが極端にカジュアル寄りな物が多く、ジャケットのインナーとして相応しい物は意外と少なかったりします。
イメージするようなバンドカラーシャツがなかなか見つからず、どうしたものかと思案していたところ、何気なく訪れたRING JACKET(リングヂャケット)で思わず一目惚れするような素敵なシャツに出会いました。
リングヂャケットらしくあくまでもドレッシーで職人の手仕事を味わえる秀逸の一枚です。私自身、手縫いのシャツが初体験なので、その魅力についてもしっかりとお伝えできればと思います。
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RING JACKET Napoliについて
国産プレタポルテの最高峰と知られるRING JACKET(リングヂャケット)。
自社工場で仕立てるスーツやジャケットで高い評価を得るブランドですが、このRING JACKET Napoli(リングヂャケットナポリ)に関しては、ナポリを中心としたイタリア南部の一流ファクトリーと協業して生まれた特別なレーベルとなっています。
その特徴はイタリア南部らしい軽やかな仕立てと柔らかな雰囲気にあり、手縫いシャツやカジュアルなジャケットなどメインラインとはまた違った趣での展開を行なっています。
また、イタリア製ではありながら、そこは流石リングヂャケット。しっかりと日本人の体型に合わせたパターンを採用しているので、本場のテイストを楽しみたいけど、フィッティングも妥協したくないというニーズにもしっかりと答えてくれます。
RING JACKET Napoliのバンドカラーシャツをレビュー
概要
リングヂャケットナポリの代名詞でもある手縫いシャツ。ドレスシャツを中心に展開してきましたが、2020年よりこちらのバンドカラーシャツも取り扱われるようになりました。ここまでドレッシー美しいバンドカラーシャツは貴重だと思います。
詳細については後述しますが、計3工程で手縫いが採用されているそうです。リングヂャケットナポリには手縫い箇所が9工程や12工程のシャツもあるので、比較すると「なんだ、3工程だけか」という気もしなくもないですが、いずれも分かりやすいポイントで効果的に手縫いが入ってくるので、その魅力を体感するには充分なはず。
ただ、手縫いだからといって着心地が良くなるということはなく、むしろ耐久性が劣るという明確なデメリットがあるのですが、それでも多くの服好きが手縫いという超アナログ要素をありがたがるのは、手作業故に生じる不均等なピッチや縫の甘さが「柔らか」というマシンメイドとは異なる独特の雰囲気を醸し出すからでしょう。
要するにミシンでかっちりと仕立てられたシャツの方が工業製品として優れているとさえ言えるものの、手縫いのシャツには嗜好性の高い工芸品として唯一無二の魅力があるということ。
シャツに限った話ではありませんが「クラフト感」って男の大好物ですもんね。
手縫いは着心地に影響しないと書きましたが、このシャツ自体はかなり着心地が良いと思います。ジャケット同様に前肩気味のパターンが採用されているので、きっとそれが私の体型にも合っているのでしょう。ジャケットにしろシャツにしろ着心地に最も影響するのはパターンです。
ちなみに手縫いのシャツは洗濯の仕方に悩むところですが、スタッフの方曰く「普通に洗濯機で洗って大丈夫」とのことなので、私もそれに倣っていますが、今のところ特に問題はなさそうですね。
ディテール
ドレスシャツ定番のブロード生地ではありますが、洗いがかかっているので適度にこなれた感じがあります。カラーの表記は「ベージュ」となっていますが、ほぼほぼライトグレーです。
襟高3cmと至って標準的なバンドカラー。カジュアルシャツらしく表前立てとなっています。
袖付けは最も目立つ手縫いの箇所になります。この不揃いな縫い目が雰囲気ありますね。それにしても物凄いギャザーとイセ込みの量。ここが一番の見所でしょうか。
上質な白蝶貝のボタンは「鳥足付け」という手法で縫い付けられています。一般的な縫い方(糸が×印)と違い、1つの穴に力が集中することで側面が少し浮き上がりボタンが留めやすくなるのだとか。高級シャツでよく見られるディテールです。おそらくこれも手縫いでしょう。
横から見ると根巻きされてしっかりと高さがあるのがよく分かりますね。細かいところにも抜かりがありません。
カフスの剣ポロには補強の閂(かんぬき)が施されています。さり気ないところですが、ひと手間かけたこだわりのディテールですね。
どうしても手縫いばかり目立ってしまいますが、ミシン縫いされた箇所も緻密で美しい運針から分かるように熟練の職人による高い技術が詰まっています。
こちらのガゼットも分かりやすく手縫いですね。どうせタックインすると見えなくなりますが、こういうちょっとした特別感が所有感を満たしてくれます。
ヨークと後ろ身頃の縫い付けはミシンによるものですが、手縫い顔負けの見事なギャザーが入ります。これは一枚で着た時に雰囲気出そうですね。
サイズ感とシルエット
身長173cm体重65kg肩幅44cmの私が購入したのはサイズ2。一般的なドレスシャツだと39~40に相当するサイズです。
肩幅と身幅はほぼ理想的。これ以上細くてボディラインが出るようなシャツは今の気分じゃないですね。強いて言えば袖丈が少しだけ長めですが、袖口がキュッと締まっているので、手首より下に落ちてくることはありません。ちなみに着丈は80cmとたっぷり長さがあるので完全にタックイン専用です。
バンドカラーシャツはボタンをきっちりと全部留めるような着こなしをイメージしますが、このシャツは第一ボタンと第二ボタンの感覚が狭いこともあり、基本的には一番上は留めないでおくものと解釈しています。
背中の雰囲気はこんな感じ。表情のあるギャザーが良い味出しています。
コーディネート
ジャケット:RING JACKET(リングヂャケット)
シャツ:RING JACKET(リングヂャケット)
パンツ:GTA(ジーティーアー)
シューズ:JALAN SRIWIJAWA (ジャランスリワヤ)
合わせるのは、同じくハンドメイド感強めなリングヂャケットマイスターのジャケット。「手縫いのジャケットには手縫いのシャツが合う」というと若干こじつけがましいかもしれませんが、少なくとも気分的には物凄くしっくりきます。グレー系のシャツを普段はあまり着ることはないのですが、無彩色なので基本的には何でも合いそうですね。
シャツ:RING JACKET(リングヂャケット)
パンツ:INCOTEX(インコテックス)
シューズ:CROKETT&JONES(クロケット&ジョーンズ)
夏にはこんな感じで、ラフに腕まくりして着たいですね。極めてシンプルな無地のシャツですが、手縫いによるニュアンスを楽しむことができるので、インナーとしてだけではなく、主役級のトップスとしても活躍してくれそうです。
ちなみにこちらでは第2ボタンまで開けていますが、ボタン間隔が絶妙なのであまりイヤらしい感じにはなっていないかと思います。
まとめ
服の中でも特に購入機会の多いシャツですが、バンドカラーシャツ自体が数年振りで、手縫いのシャツに関しては初体験だったということもあり、久しぶりにシャツを着てテンションが上がるという感覚を味わえました。
シャツはあくまでも消耗品、少しでもコスパが良い物を選びたいというスタンスを取っているので、ちょっとしたアウターが買えてしまうぐらい高額なシャツはそうそう手は出せませんが、他に替えがないという意味ではその価値は十二分にあったのかなと思う次第です。
今回は以上です。