トラッドマンに憧れて

自分なりのトラッドスタイルを模索する30代のリアルな服・靴・時計etc…について

通年ノーネクタイの是非について。

クールビズのノーネクタイが日本に定着してどのぐらいになるでしょうか?少なくとも私が社会人になった十数年前の時点で完全に市民権を得ていたと思います。

 

一方で現在は1月。年間で最も平均気温が低い時期です。そんな中オフィス街や通勤電車の中のスーツを着たビジネスマンの装いを見てください。クールビズ期間なんてとうに終わっているにも関わらずノーネクタイの割合の多いこと。正確に集計したわけではありませんが、私の感覚だとその割合は約50%といったところでしょうか。

 

5~6年ぐらい前からだと思いますが、一部の大企業が通年ノーネクタイに取り組み始めてからその影響は徐々に多くの会社へと波及して、今では「お堅い職業」の代表でもある役所(公務員)や銀行やでも採用されているケースが見受けられます。

 

そして、かくいう私が勤める会社もだいぶ前から通年ノーネクタイを推奨しています。あくまでも推奨ですが、日本人特有の同調圧力もあり実質は強制です。

 

今回の記事では「通年ノーネクタイの是非」について書いてみようと思います。これに関してはずっと思うところがあるんですよ・・・。

 

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通年ノーネクタイについて思うこと

ネクタイを締めることの意味

よく言われることですが、スーツスタイルはメンズファッションの完成系です。そのため、サイズ感や色使いで多少の好みの差が生じることがあれど、着こなしのアレンジは完全に邪道となります。カジュアルファッションと違い大枠の正解は1つしかないのがスーツの世界です。

 

そしてスーツスタイルは共地のジャケットとスラックス、襟付きのドレスシャツ、足元には革靴とロングホーズ、そしてネクタイを締めるところまでがセット。ポケットチーフや腕時計はオプションのような存在で別にあってもなくても良いのですが、先に挙げた基本6点は必須。どれが欠けてもダメ。つまりネクタイを締めないという選択肢は本来はあり得ないのです。

 

少し話は変わりますが、スーツの発祥は16世紀頃のイギリスだそうです。とはいえ当時のスーツは現在とはデザインや着こなしとも大きく異なっていたのですが、時代が進むにつれて徐々に形を変え、20世紀初頭には現在のスタイルが確立されました。要するに長い月日をかけブラッシュアップされ、かつ直近の100年以上では大きな変化のないスーツスタイルはまさに先人の知恵の結晶。これ以上がない完成系。

 

なので「なぜスーツを着る時にネクタイを締めるべきなのか?」という問いに対しては「スーツスタイルはタイドアップを前提とした完成されたフォーマットだから」ということになります。

 

クールビズについてはどう思う?

ではノーネクタイが基本となるクールビズについてはどうでしょうか。これは人によって意見が分かれるところかもしれませんが、個人的にはアリです。

 

いや、もちろんタイドアップした方がカッコいいことは百も承知ですが、衣類本来の役割である体温(湿度)調整という機能を無視することはできません。首元から空気が通るようになることで得られる快適性は代え難いものがあります。

 

そもそもスーツ文化発祥のイギリスは夏でも冷房いらずな寒冷な気候。ほぼ亜熱帯のような高温多湿の日本の夏を同じように考えるわけにはいきませんよ。

 

それにファッション的な観点からしても、軽やかさを重視する春夏の装いで首元をすっきり見せるノーネクタイスタイルはそこまで悪いものではないと感じています。

 

通年ノーネクタイのメリット

クールビズ期間は体温調節という大義名分があるので、完成されたスーツスタイルのフォーマットを逸脱することに対してある程度の説得力を持たせることができるのですが、気温が下がり快適に過ごせるようになる秋口や寒さが厳しい真冬でもノーネクタイを奨励するメリットはどこにあるのでしょうか?

 

正直私には何一つメリットを感じるようなポイントはありませんが、強いて言えば朝の身支度が短縮されることと、首元が締めつけられる感覚から解放されるぐらいでしょうか。

 

他に何かありますかね?クルービズとしてのノーネクタイと違い明らかに説得力に欠けていますね。

 

ノーネクタイを推奨するならスーツ着用義務も撤廃すべきではないか

スーツスタイルとは極めてフォーマルな装いであるためビジネスシーンで好まれてきましたが、ネクタイを外した時点でその役目は失われたようなもの。なんせルールを無視しているわけなので。もはやカジュアルです。

 

それならば中途半端にスーツ着用にこだわらず、柔軟にジャケパンなどのオフィスカジュアルへと移行すればいいのにとは常々思っています。

 

ただ、そうならない理由も分かります。スーツを着てネクタイを締める「従来の正装」が急に必要になった際に対応できるためです。

 

一番分かりやすいケースは何らかのトラブルが発生してお客様・取引先へ謝罪に伺う時です。相手へ誠意を見せなくてはならない場面なので、それに相応しい格好(=スーツ&タイドアップ)で臨むことが求められます。そしてそのようなシーンは当日突然に訪れるものです。他にも緊急で重要な会議が入る、打ち合わせを兼ねた会食に呼ばれるなど、普段は必要としていないにも関わらず、急に正装を求められるということはビジネスマンならよくある話ではないでしょうか。(かくいう私はほとんどそんなケースに出くわすことはないのですが・・・。)

 

とりあえずスーツを着させておけば、必要な際に鞄やデスクの引き出しにでも常備しているネクタイを取り出して臨戦態勢を取れるという寸法なのでしょう。

 

スーツを単なる作業着と捉えれば実に合理的ではありますが、ファッションの面から見れば如何なものかなと思わずにいられません。

 

秋冬のノーネクタイを「マシ」に見せるポイント

先にも述べた通り、クールビズ期間は別として秋冬のノーネクタイはどう足掻いてもカッコいいものではありませんが、会社がそれを推奨する以上はそれに則り少しでもマシに見えるように工夫したいところですね。

 

ここでは通年ノーネクタイを推奨する会社に勤める私が、秋冬のスーツスタイルで意識しているポイントをご紹介します。春夏に関してはまた別の機会に。

 

ベストを活用してVゾーンを小さくする

タイドアップを前提としたスーツスタイルからネクタイだけ差し引かれたVゾーンは間延びした印象を与えてしまいます。特に秋冬のスーツは暗めのトーンの生地が好まれる一方で、ビジネス使いできるシャツは季節に関わらずホワイトかサックスブルー、次点で淡いピンクぐらいなので、どうしても色味に差が付きすやすく不完全なVゾーンがより際立ってしまいます。(おまけにスーツが起毛素材ならなおさらです。)

 

その欠点をある程度カバーしてくれるのがスリーピースのスーツ。ベストを挟むことでVゾーンが自体が小さくなり、全体で見た時に目立ちずらくなります。それにスーツはスリーピースの方がよりフォーマルになるので、ノーネクタイというハンデ(!?)をいくらか補えます。

 

スリーピースで誂えていないのであれば、ニットジレやカーディガンなんかで代用しても良いでしょう。ともかく空白を埋めることが大切です。

 

コートを着用る時は必ずマフラーを

さて、冬本番となれば通勤時にコートを羽織る方が多いかと思いますが、このコートが厄介な存在です。なんせスーツ以上にドレスシャツと生地感に差が付きすぎるので、ベストで隙間を小さくしたVゾーンですら浮いてしまいます。

 

なら、どうすれば良いのか。答えは簡単なことです。マフラーを巻いて胸元を完全に隠してしまいましょう。寒い・寒くないは関係なくスーツでノーネクタイの上からコートを着るならマフラーは必須です。何ならコートを着てなくてもマフラーさえ巻いてしまえば屋外でのノーネクタイ問題は解決したようなものです。

 

まとめ

私が社会人になったここ十数年の間でも随分とビジネススタイルのカジュアル化が進んだと実感します。

 

ただ、まだまだ過渡期なのでしょうか。今回取り上げた通年ノーネクタイ然り、中途半端なものが多いですね。そして中途半端が一番ダサい。

 

多くの方が論じられている通り、最終的にはビジネスウェアもドレス(フォーマル)とカジュアル(ほぼ私服)で二極化することになるとは思いますが、いずれにせよ完成されたスーツスタイルを着崩すということは悪手であると偉い方々には気付いて欲しいものですね・・・。

 

今回は以上です。