多くの企業では5月からクールビズ期間に突入して、既にネクタイはしていない方が増えてきましたね。むしろネクタイを締め続けている方が圧倒的少数派です。
この暑さなのでそれ自体は合理的だと思うのですが、どうにもネクタイを外した途端にダサくなる人が多いのも事実。
かくいう私は通年ノーネクタイを推奨する会社に勤めているので、クールビズだからどうのこうのはありませんが、それだけに人一倍、いや人十倍ぐらいはノーネクタイのビジネススタイルについて真剣に考えてきました。
ということで今回の記事ではそんな私なりに辿り着いたノーネクタイに適したシャツの選び方について解説していきたいと思います。
ジャケットや小物、着こなしなど他にもポイントはありますが、ここではネクタイを外してみて一番最初に違和感を覚えるであろうシャツについて焦点を当てていきます。
なお、記事中ではジャケットありのノーネクタイを前提として話を進めていますが、さらに季節が進んだシャツ1枚だけの装いもほぼ同じと考えご覧ください。
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なぜネクタイを外すとダサくなるのか?
ネクタイ着用を前提に完成されたスタイル
そもそもなぜネクタイを外した途端にダサくなるのかという話ですが、これは過去記事で何度か書いてきた通り。以下セルフ引用します。
よく言われることですが、スーツスタイルはメンズファッションの完成系です。そのため、サイズ感や色使いで多少の好みの差が生じることがあれど、着こなしのアレンジは完全に邪道となります。カジュアルファッションと違い大枠の正解は1つしかないのがスーツの世界です。
そしてスーツスタイルは共地のジャケットとスラックス、襟付きのドレスシャツ、足元には革靴とロングホーズ、そしてネクタイを締めるところまでがセット。ポケットチーフや腕時計はオプションのような存在で別にあってもなくても良いのですが、先に挙げた基本6点は必須。どれが欠けてもダメ。つまりネクタイを締めないという選択肢は本来はあり得ないのです。
少し話は変わりますが、スーツの発祥は16世紀頃のイギリスだそうです。とはいえ当時のスーツは現在とはデザインや着こなしとも大きく異なっていたのですが、時代が進むにつれて徐々に形を変え、20世紀初頭には現在のスタイルが確立されました。要するに長い月日をかけブラッシュアップされ、かつ直近の100年以上では大きな変化のないスーツスタイルはまさに先人の知恵の結晶。これ以上がない完成系。
なので「なぜスーツを着る時にネクタイを締めるべきなのか?」という問いに対しては「スーツスタイルはタイドアップを前提とした完成されたフォーマットだから」ということになります。
引用:通年ノーネクタイの是非について。 - トラッドマンに憧れて (tradman-dc.com)
スーツ程ではないにしろ、ルーツが同じジャケパンスタイルもやはりネクタイがあった方がしっくりきます。あくまでもタイドアップが正統でノーネクタイは邪道・亜流。そのままただネるクタイを外しただけはNGで工夫が必要だぞということです。
シャツの胸元のよれ
それまでのタイドアップスタイルからクールビズ期間に入りとりあえずネクタイを外してみただけの人によく見られるのが画像のようなシャツの胸元よれです。
ビジネス向きのドレスシャツ、特に高級とされる物は柔らかい質感の素材が多いので、第1ボタンを外すとどうしても生地がよれてしまいます。やはりその手のシャツはタイドアップありきなのでしょう。
カジュアルの場合、よれ具合によってはニュアンスとして肯定的に捉えられるケースもありますが、ビジネスの場ではただだらしないだけですね。
なのでタイドアップする場合とは異なる基準でシャツの襟型や生地を選ばなくてはいけません。詳しくは次項をご覧いただきましょう。
ノーネクタイに適したシャツの選び方
襟型
参照:メーカーズシャツ鎌倉 公式通販| 鎌倉シャツオンラインショップ (shirt.co.jp)
こちらの参考画像は最もオーソドックスとされるレギュラーカラーのシャツ。ただこの襟型はあくまでもタイドアップが前提なので、ノーネクタイで着るとなんともバランスが悪く、襟先がジャケットに収まらなかったりします。
そもそも昔ながらのレギュラーカラーシャツって最近はあまり売ってないのですが、もしお手持ちであればノーネクタイで着用するのは避けるべきでしょう。
そこでまずおすすめの襟型はボタンダウンです。他の襟型と違い襟先をボタンで留めることで立体感が生まれ、ネクタイを失った物寂しいVゾーンのアクセントとなるだけではなく、襟先が下がり胸元の生地がよれてしまうことを防ぐ効果があります。もちろん襟が跳ねてジャケットに収まらないなんて心配も不要です。
ここ日本ではかなりメジャーな襟型で皆さんも数枚はお持ちでしょうから、ノーネクタイで合わせるシャツに迷ったらとりあえずボタンダウンで間違いありません。
■スプレッドカラー
ボタンダウンは苦手だとか、他にもバリエーションが欲しいという方にはスプレッドカラーです。スプレッドカラーとはレギュラーカラーと比較して襟の開きが広い襟型。タイドアップでもノーネクタイでもバランスが良いことから最近ではレギュラーカラーよりもこっちが主流となっています。
ただ、ひとえにスプレッドカラーと言っても襟の開き具合や襟先の長さが物によってまちまちなので、ボタンダウンのようにとりあえずこの名称の襟型ならOKというわけにもいきません。
私もスプレッドカラーのシャツは色々と試してきましたが、特に個人的におすすめなのは鎌倉シャツのFRANCESE(フランチェーぜ)という襟型です。先程の参考画像でも着用していましたが、襟の感じが分かりやすいようにジャケットを脱いでみました。
第1ボタンを外した際の自然な襟の開き方と安定感(収まり具合)が気に入っています。ボタンダウン以外でなんかしっくりくるシャツが見つからないという方は一度試していただきたい。
■ワンピースカラー
参照:メーカーズシャツ鎌倉 公式通販| 鎌倉シャツオンラインショップ (shirt.co.jp)
あいにく手持ちにちょうど良い物がありませんが、完全にノーネクタイ専用と割り切れるならワンピースカラーもあり。ワンピースカラーとは身頃と襟が1枚の生地で繋がっている襟型で、一般的なシャツと違い台襟が省かれるため、胸元から伸びる襟もきれに立ち上がります。
生地
ブロードクロスに代表されるようにビジネスで重宝されるドレスシャツは薄手で柔らかい生地が好まれがちですが、先にも書いた通り、そのようなシャツは1番上のボタンを外した際に開いた胸元の生地がよれてしまいます。
そのためノーネクタイの場合はある程度ハリのある生地を選ぶ必要がありますが、かといって一定のドレス感も必要となるので、そのバランスを上手く取っていかなくてはいけません。
■ピンポイントオックスフォード
一般的なオックスフォード生地といえば粗めの質感が特徴で、もちろんしっかりとしたハリ感はあるのですが、良くも悪くもカジュアルな印象は拒めず、必ずしもビジネスに適してるわけではありません。(当の私は割と普通に着ますが・・・)
その点で通称「ピンオックス」とも呼ばれるこの生地はオックスフォードと同じ織り方で細い糸を使用しているので、滑らかな手触りのドレス顔でありながら一定のハリ感も保ったバランスの良い生地となっています。ピンオックスのボタンダウンシャツは私の定番の1つです。
■ツイル
ブロードもオックスフォードも経糸と緯糸を1本ずつ交差させて織る平織の生地ですが、ツイルとは経糸を3本と緯糸1本を潜らせた綾織の一種となります。斜め方向に浮き出る織り目が目印です。
シャツ以外だと代表的なところでチノパン(チノクロス)でもコットンツイルが使われていて、その生地を思い浮かべてもらえば分かりやすいのですが、光沢が強く適度なハリ感もある素材となっています。
ただ、ドレスシャツの中ではやや厚手な生地となるので、季節でいえば通年〜秋冬寄りになるかもしれません。まぁ、真夏意外ならOKぐらいに考えておいてください。
■3PLY/4PLY
上2つは生地の織り方や糸の太さについての分類でしたが、これは糸自体の構成についてです。
一般的にシャツ生地で使用されるような糸は2本の原糸を撚り合わせた双糸がほとんどかと思いますが、それよりも本数の多い3〜4本の原糸で撚り合わせた糸がそれぞれ3PLY/4PLYと呼ばれます。(稀に6PLYとかもあります。)
より多くの原糸を撚り合わせているので糸そのものに反発力が強く、生地として仕上がった際には非常に強いハリコシが生まれます。
また、ドレスシャツの場合だと3PLY/4PLYの生地には番手の高い原糸が使われるので、美しい光沢感もしっかり持ち合わせている生地が多いようです。ちなみに上の参考画像の生地には200番手の4PLYが使用されています。
ボタンの間隔
意外と見落とされがちですがボタンの間隔、こと第1ボタンと第2 ボタンの間隔も重要な要素です。
この間隔が狭すぎるとせっかくのノーネクタイでも窮屈な印象を受けてしまい、広くても胸元が開きすぎてビジネスの場合では相応しくありませんね。
また、個人的な見解ですが、イタリア親父よろしく第2ボタンまで開けてしまうのもビジネスでは基本的にはNGなので、第1ボタンだけを開けてちょうど良い具合に襟が開かなくてはいけません。
ここに関しては、その人の趣味や体格によって分かれるところがあるので一概にどれが正解とは申し上げられませんが、台襟の下から測って概ね5〜6cm程度の位置に第2ボタンがあるのが目安の1つです。
結構ブランドによって違いがあるので、ボタンの間隔も一度気にかけてご覧になってください。
洗濯のりスプレーを活用
ここまでの内容で如何に私がシャツの胸元の生地がよれてしまうことを嫌っているのか、よくお分かりいただけたかと思います。
それを防ぐことを念頭に置いた襟型であり生地だったのですが、それに加えてより効果的なのが昨年ブログでも紹介した洗濯のりスプレーです。第1〜2ボタン周辺のみにスプレーを吹きかけ洗濯のりによって部分的に生地をパリっと仕上げます。
詳細は当該記事をご覧いただくとして、この洗濯のりスプレーは非常に有用です。今でもアイロン掛けの際には必ず使っています。ノーネクタイスタイルにこだわる方は是非。
こんなシャツには要注意
ここからは私の感覚的な内容になるのですが、世間的にノーネクタイにおすすめ、もしくは特に否定されていないけど個人的には要注意だと感じているシャツをいくつか上げていきます。
カッタウェイ
スプレッドカラーよりも襟が大きく開いて、襟先も短めに設定された襟型。ノーネクタイに合うシャツとしてボタンダウンと並び紹介されることが多いかと思いますが、個人的には少し微妙。
カッタウェイは数年前に持て囃された反面、現在ではトレンドアウトした感も拒めません。まぁ、トレンド云々を抜きにしてもビジネスの場面で着るには少しファッション的すぎるというか、浮いているように感じるのも違和感を覚える要因です。
とはいえ私のワードローブには何枚かのカッタウェイシャツがあり、実際に今でも着ることはあるので完全に否定するわけではないのですが、それでも一昔前のような襟先が後ろを向くぐらい極端に開いた物は避けた方がベターでしょう。
白シャツ
「何言ってんだ、白シャツは基本だろ」と思われそうですが、私はノーネクタイで白シャツは合わせません。
白シャツは何にでも合うとよく言われますが、それはタイドアップが前提だと私は考えています。少し分かりづらい例えかもしれませんが、白シャツは絵画でいうキャンバスで、そこに描かれるのがネクタイです。白は背景(余白)としては実に優秀で、どのような絵を描いても大体は合いますが、ネクタイを失った途端に白シャツは背景でいられなくなってしまいます。
背景でなくなったシャツは単体でその上から羽織るジャケットと対等な存在となりますが、そうするとピュアホワイト(真っ白)はジャケットの色味と差が付きすぎてしまいます。白は全ての中で最もトーンの明るい色なので、基本的にはどの色とも馴染まないというのが私の見解です。
参考画像のコーデなんか完全に白シャツが浮いているように私には見えます。これでネクタイを締めていれば「ジャケットとシャツ」ではなく「ジャケットとネクタイ」に目が行くはずなので、背景と化したシャツは無彩色の白がむしろ都合が良い場合もあるのですが、やっぱりノーネクタイだとしっくりこない。
それでももし白シャツを合わせるなら、ピュアホワイトではなくオフホワイトが良いでしょう。なんでも合うとは言いませんが、ブラウン系のジャケットにはクリームがかったホワイト(いわゆるアイボリー)、ネイビー系のジャケットには灰がかったホワイトが好相性です。
なお、ここでノーネクタイだと真っ白なシャツが合わないぞと主張しているのはジャケットを羽織ることが前提とした話で、シャツ1枚で着る分には特に否定はしていないのでご留意ください。
クレリックシャツ
クレリックシャツ自体は大好きです。でもこれも基本的にはタイドアップありきでしょう。ネクタイがないと身頃と襟で色が変わる境目が丸見えとなり不自然に感じてしまいます。
むしろそこがアクセントとなってノーネクタイスタイルにはよく合うなんて意見も聞いたことがありますが、私の感性だとちょっと違います。
シャツ1枚だと袖の切り替えまで見えちゃうので、なおさら微妙。やはりクレリックシャツはかっちりタイドアップして、ジャケットを羽織ってこそですね。
まとめ
どうもこだわりが強いだけに、気が付けば結構なボリュームで書いてしまいました。
本当はタイドアップが一番かっこいいことは分かっていますが、日本の蒸し暑さには勝てませんし、我慢してネクタイを締めることが美徳とされる時代でもありません。
でもだからといって全てを諦めてしまうのはもったいない。是非とも抗って欲しい。
少しでもそんな方の参考になれば幸いです。
ただ、感覚的な内容が多くて伝わりにくかったかも・・・。特に白シャツのくだりとか。うーん、難しい。
今回は以上です。