
リーバイスの501やブルックスブラザーズのボタンダウンシャツ、ラコステのポロシャツをはじめ、トラッド好きなら避けては通れない定番アイテムがいくつか存在します。今回ご紹介するBARACUTA(バラクータ)のG9もその1つ。
きっといつかは買うんだろうなと思いつつ、いつでも手に入る定番ゆえに後回しになっていましたが、その「いつか」は突然訪れます。
店頭で見かけた際には定期的に試着をして、「やっぱりまだ似合わないな」と断念するのがいつものことなのですが、この日は違いました。妙にしっくりくる。私もじきに36歳を迎えるので、気が付けば立派なオジサンです。「俺もようやくバラクータが似合う年齢になったのか」と思うと腑に落ち、気が付けばG9をお持ち帰りしてました。
家を出る時は全くそんな予定はなかったのですが、急遽ワードローブ入りすることになった名作ブルゾンをご紹介します。どうぞご覧ください。
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バラクータについて

英国・マンチェスターで家業として営んでいたレインウェア工場を引き継ぐ形で、1937年にジョンとアイザックのミラー兄弟が「BARACUTA(バラータ)」を設立。そのブランド名は日本名でオキサワラと呼ばれる魚「Barracouta」に由来しており、将来的な海外進出を目論見エキゾチックな響きのネーミングを採用したそうです。
当初は主にコートを取り扱っていましたが、ゴルフ好きであった兄弟は「プレー中に雨風を凌げるジャケットを作ろう」と思い立ちます。いくつかの試作品を経て、英国軍のジャケットをサンプリングした「G9」が発売されたのは1948年のことでした。ただし、ブランドの立ち上げと同じ1937年にはG9の原型は完成していたという話もあるので、誕生年をいつにするのかは諸説ありといったところでしょうか。
「G」はゴルフを意味しており、その9番目に開発されたモデルのためG9と名付けられたという話は有名ですが、現存する他の「G」が付くモデルはG4がドライビングジャケット、G12がバルマカーンコートなのでその真相は不明です。
同時期に誕生したゴルフジャケットとしてはグレンフェルのゴルファー、ブルゾンという括りではより歴史の古いヴァルスターのヴァルスタリーノなどいくつかの有力モデルが存在する中、それらを差し置いてG9が「ブルゾンの代名詞」としての地位を不動のものにしてきたのは、多くの著名人にまつわるエピソードが欠かせません。
1954年の映画「闇に響く声」ではエルビス・プレスリー、1964年のドラマ「ペイトンプレス物語」ではライアン・オニール(演じた役名のロドニー・ハリントンはハリントンジャケットの由来)が着用したことで、アメリカを発信源として世界中にG9の存在が広く一般的に認知されるようになりました。また、スティーブ・マックイーンや高倉 健に関してはプライベートでもG9を愛用していたことで有名です。他にもダニエル・クレイグやジェイソン・ステイサム、ポール・ウェラー(ザ・ジャム/スタイル・カウンシル)など枚挙にいとまがありません。ファッションという性質上、今でいうところのインフルエンサーの存在は多大な影響を及ぼしました。
ここ日本では1970年代前半に正規輸入され始めますが、上記の通りアメリカでの人気を受けて、英国ブランドでありながらアメトラ・アメカジの文脈で紹介されることも多かったようです。以降も継続して日本での人気を集め、リアルアイビー世代から令和の若者まで、トラッドを愛する者であれば避けて通ることはできないブランドの1つとなっています。
バラクータのG9をレビュー
概要

バラクータの絶対的なアイコン「G9」。ドッグイヤーカラーの通称で知られる立ち襟や背面のアンブレヨーク、印象的なチェック柄の裏地などのアイコニックなディールは、後に多くのブランドに模倣されることになります。ゴルフをルーツに持つだけあって可動域の広い肩回りや多少の雨ならものともしない撥水性といった特徴を持ち、それらは日常使いの中でも確かなメリットとなるはずです。
長い歴史を持つG9ですが、永世定番と呼ばれる多くのアイテムと同様に、時代に合わせたアップデートが行われてきました。シルエットに関しては細身のレギュラーフィットと往年の名優達が着用していたようにゆったりとしたオーセンティックフィットが展開されていますが、国内で一般的に流通しているのはレギュラーフィットの方になります。私が購入しているのもレギュラーフィットです。なお、現行モデルだとタグにスリムフィットと表記がある場合もありますが、基本的にはレギュラーフィットと同じと捉えてよいかと思います。
また、近年のバラクータは生産拠点をアジアに移しており、人気モデルのG4もベトナム製に切り替わる中、G9に関しては今でもMADE IN ENGLANDが堅持されています。やはりバラクータにとってはG9は特別な存在なのでしょう。

アウターとしては他に類を見ないほどに豊富なカラー展開もG9の魅力で、時期によっても異なりますが、概ね10色前後が揃っています。人気の色はシグニチャーカラーであるタン(暗めのベージュ)や使い勝手の良いネイビーになりますが、今回私が選んだのはダークネイビーです。
上の画像ではほぼ黒にしか見えませんが、これは写り方の問題ではなく実物も大体こんな感じ。伝統的にバラクータのダークネイビーはかなり色味が深く、いわゆるミッドナイト(限りなく黒に近いネイビー)と呼ばれる色に近いかと思います。普段は黒の服はほぼ着ないので、この暗さには戸惑いもありましたが、シックな色味はG9が持つ野暮ったさを上手い具合に中和してくれています。試着して妙にしっくりきたのはこの色味の影響も大きかったかもしれません。

どうしても単体だと黒にしか見えないので、屋外で黒色のニットを並べてみました。こうしたらようやく黒じゃないなと分かりますね。黒のようにシックだけど、黒ほど強くはない絶妙な色味はバラクータ G9というトラッドど真ん中のアイテムと高い親和性を発揮するのです。事実、ダークネイビーはこのモデルを象徴するカラーの1つとして定番となっています。
ディテール

かつてはコットン100%の生地が使われていましたが、機能性を高めるため2013年頃にコットン50% ポリエステル50%に変更されました。さらに直近ではポリエステル58% コットン42%の個体が流通するようになっています。現時点では50/50と58/42が混在しているようで、今年になって手に入れた私のG9は後者の方になります。
さすがにポリエステル感は否めませんが、決してチープに感じるわけではなく、シエラデザインやウールリッチなどのマウンテンパーカーで使われている60/40クロスに近い手触りと風合いです。(直接的な関係はなさそうですが、現在の国内代理店はウールリッチジャパンとのこと。)

生地表面にはテフロン加工が施されており、試しに水を垂らしてみると見事に水滴を弾いていました。これは想像以上に撥水性能は高そうですね。生地の変更もこういう点で寄与しているものと思われます。

先端が犬の耳のように垂れることからドッグイヤーカラーと呼ばれる立ち襟。風が吹き荒れる日には首元のボタンを留めて防風仕様にしても良いでしょう。着こなしとして襟を折り曲げてシャツ襟のように上品に見せることも可能です。

動きやすさを確保する袖付けはラグランスリーブを採用。

フラップ式のサイドポケットは手を入れやすいように斜めに取り付けられています。あまりジャケットのポケットは使いたくありませんが、寒い日にはガサッと手を突っ込みたくなりますね。

全てのボタンはブランド名が刻印されたオリジナルの本水牛製です。

裾と袖口はフィット感を高めるリブ仕様。コットンが92%使用されており、伸縮性もありながら肌当たりは良好です。

前閉じはオリジナルのダブルジップ。古いモデルだとスライダー(つまみ部分)は1つだけでしたが、ダブルにすることで着こなしの幅は広がり、一気に洗練された印象となります。このデザインでシングルジップだと昔ながらの”ジャンパー”感が半端ない・・・(笑)。意外とここ重要です。

背面に入るギザギザの切り替えはアンブレラヨークと呼ばれるディテールで、雨水が下に滴れ落ちるようにする効果があり、トレンチコートなどにも広く見られます。

バラクータといえばな印象的な真っ赤なタータンチェックの裏地。これは創業者・ミラー兄弟が趣味のゴルフを通じてサイモン・クリストファー・ジョセフ・フレイザー(ラヴァト卿)から許可を得て、一族を象徴するタータンチェック(日本でいう家紋の役割)をG9に採用したことに端を発します。これが通称フレイザーチェックと呼ばれる由来です。
ちなみに裏地には吸水速乾性に優れた機能素材のCOOLMAX(クールマックス)が使われています。伝統的なフレイザーチェックはそのまま、表地同様に現代のテクノロジーを駆使して進化を遂げていました。

左側にはボタン付きの大型ポケットが確認されます。これはゴルフのプレー中にボールやピンを入れるために設けられていたそうです。

同じく左側面には複数枚のタグが取り付けられています。リーバイスなんかもそうですが、世界的に展開しているブランドは複数言語で用意する必要があるので、どうしてもタグの枚数が増えてしまいます。致し方ないことではありますが、これ結構邪魔なんですよね。

そんな悩みを解決してくれるようにタグを収納するポケットが用意されています。こういう仕様は初めて見ましたよ。裏地と供地なので悪目立ち心配する必要もありません。
サイズ感とシルエット

身長173cm 体重65kg 標準体型の私が購入したのはサイズ40。クラシカルな印象の強いG9ですが、そのイメージに反してレギュラーフィットのサイズ感はかなり細身に作られています。同じく英国ブランドでもグレンフェルやマッキントッシュだとサイズ36が基本となるので、如何にG9がコンパクトなのかがよく分かります。
とはいえサイズ38でも若干肩回りに窮屈さを感じるものの、問題なく着用は可能です。すっきりと着こなすのであればサイズ38を選んでいたと思います。
手持ちのショートブルゾンでもゴルファーやヴァルスタリーノはジャストで着たかったのですが、G9に関しては適度にゆとりを持たせた方が「らしさ」を感じたのでサイズ40を選んだ次第です。袖が少し長めではありますが、リブで止まって袖口に生地が溜まるとこまで含めて「らしさ」を感じるポイントとなります。
私と近い体型の方の場合、スタイリッシュに着こなすのであればサイズ38、クラシカルな魅力を活かすのであればサイズ40、カジュアルにオーバー気味で着るのであればサイズ42といった感じでしょうか。ご参考までに。

ジッパーを閉めるのであれば、ダブルジップを活かして真ん中より下めで留める感じがカッコいいですね。チェックが見える面積も少なくなるので、コーディネートのバランスを取る手段としても有効です。
コーディネート

アウター:BARACUTA(バラクータ)
パンツ:INCOTEX(インコテックス)
元々は春に適したアウターを探していたのですが、ほぼ黒のダークネイビーは明らかに重い。であれば淡いトーンのインナーやパンツでバランスを取ってみます。やはりG9のインナーはボタンダウンシャツが最適ですね。

アウター:BARACUTA(バラクータ)
ニットポロ:BROOKS BROTHERS(ブルックスブラザーズ)
パンツ:LEVI'S(リーバイス)
黒とネイビーの相性は悪いというのが定説ですが、あくまでもダークネイビーなので、ネイビー・ブルー系のアイテムとの馴染みも良好。全体の色数を抑えることで裏地のタータンチェックも取っ散らかることなくまとまります。
まとめ
予定外の購入となりましたが、いずれ買うはずだったバラクータのG9をご紹介しました。私にとって通過儀礼のような存在だったので、ある種の達成感を味わっています。
色味的に春用アウターとしてはどうなのかという懸念は残りますが、着こなしも難しく考える必要はなく、機能性の高さは子育て中の身としてはとても心強い存在ですね。
ワードローブ内でいくつか競合しそうな短丈アウターがあるもの、シルエットや機能性の面で差別化できているので、このG9の活躍の場も多いかと思います。
今回は以上です。