当ブログ開始時より幾度となく言及してきた憧れの逸品 ヴァルスタリーノ(バルスタリーノ)。紆余曲折を経てついに手に入れることができました。
購入したのは伝統のスエードモデル。「一生モノ」という言葉は滅多に使わないようにしていますが、このブルゾンはそう呼ぶのに相応しい存在です。
高い知名度に反して、実はネット上でも情報があまり多くないヴァルスタリーノなので、購入を検討されている方には参考になるかと思います。是非ご覧ください。
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服飾史に名を残すヴァルスタリーノとは?
ヴァルスターについて
まずはブランドとしてのValstar(ヴァルスター)について。
1911年にイタリア・ミラノにて創業した老舗。今となってはレザーブルゾンがあまりにも有名ですが、元々はレインコートを製造するメーカーとして始まったというルーツを持っています。
現在でも本国イタリアの自社工場で一貫製造を守り続けており、ブランドのアイコンであるヴァルスタリーノの他、トレンチコートやタイロッケンコートなどのクラシックなアウターでも高い評価を得ています。
ヴァルスタリーノの歴史
ヴァルスタリーノが登場したのは1935年。全てのブルゾンの原型とされています。似たようなデザインのアウターが一般的に「バルスターブルゾン」と称されるのも当然このヴァルスタリーノが由来です。
同じようにブルゾンの祖と呼ばれることが多いバラクータのG9が発表されたのが1948年であることから、その歴史の長さを窺い知れます。(G9の方はジップアップブルゾンの原型という意味で使われているようですね。)
後に多くのブランドに影響を与えたヴァルスタリーノですが、その意匠は完全オリジナルというわけではなく、米国空軍のA-1フライトジャケットがデザインソースとなっています。
■A-1フライトジャケット
参照:フライトジャケットの種類・特長など【基礎知識】 | メンズファッションブランドナビ
ご覧の通りスタンドカラーやフラップポケット、フロントボタンなど特徴的なディテールは共通しておりでデザイン上の違いはぼ無いように見えますね。
ただ、これもよくある話。当ブログでも何度か触れてきたて通り、全ての洋服(特にメンズ)には必ず実用品としてのルーツがあります。
ヴァルスタリーノにとってのそれはA-1フライトジャケットであり、軍装品にアレンジを加え市民の街着へと昇華させた点において歴史的価値があるのです。
ヴァルスタリーノのバリエーション
■素材
ヴァルスタリーノの生地(素材)といえばスエードが最も有名ですが、他にもバリエーションが豊富に揃っています。
現在国内で見かける機会が多いのは、コットンナイロンかウールリネンあたりですが、ウールメルトンやスムースレザー、コットンギャバジンのモデルも存在します。冬用として中綿入りの物もあるみたいですね。
同じデザインでも素材が異なれば見た目の風合いや着用時期が変わってきて、そもそも価格も全然違ってくるので、色々と悩ましいところがあります。
■シルエット
昔ながらのゆったりとしたサイジングで本国仕様のGLOBAL FITと日本人向けに細身のシルエットへと調整が入ったJAPAN SLIM FITの2種類が用意されています。国内で販売されているヴァルスタリーノは圧倒的にJAPAN SLIM FITの方多いのですが、一部でGLOBAL FITを取り扱われるお店もあるので、手に取る際はシルエットにもバリエーションがあることを頭に入れておきましょう。
基本的にヴァルスタリーノはある程度タイトなフィッテイングが推奨されているので、標準体型の方であればJAPAN SLIM FITを選べば間違いないかと思いますが、バラクータを着た往年の高倉健よろしくクラシカルな着こなしを目指すならGLOBAL FITを視野に入れてみても良いかもしれませんね。
ちなみにJAPAN SLIM FITではなく本国仕様のSLIM FITが稀に出回っていることもあるみたいです。日本仕様ともまたサイズ感が異なってくるので、単にSLIM FITとしか表記がない場合は要注意。
■ライニング
おそらくスエードモデルだけかとは思いますが、通常のライニング(裏地)ありの他に、アンライニング(裏地なし)仕様を選ぶことが可能です。
ライニングを省くことによって、防寒性能が低くなる変わりに春先まで着用可能となり、表生地1枚なのでスエード特有の柔らかさがより伝わりやすいという側面を持っています。
冬場には着れなったり、耐久性が落ちるなどのデメリットとトレードオフにはなりますが、アンライニングモデルも多くの支持を集めているようです。
ヴァルスタリーノ入手困難問題
ここ数年、ヴァルスタリーノに想いを馳せながらも購入に至っていなかった理由は「どのモデルを選ぶべきか迷う」「それなりに高価なので踏ん切りがつかない」などが挙げられますが、それ以前に「そもそも売っていない」という根本的な大問題がありました。
雑誌等のメディアでは大人の定番アイテムと持て囃される一方で、入手難易度は高めというのが今のヴァルスタリーノを取り巻く状況です。
その要因は現在ヴァルスター社には国内正規代理店が存在していないことにあると思われます。バブアーであれば伊藤忠商事、マッキントッシュであれば八木通商といった具合に、日本での人気の高いインポートブランドの多くは、窓口となる国内正規代理店がつき、その製品を店頭に並べたい小売店は代理店を通して仕入れを行うことになりますが、国内に正規の窓口がないヴァルスター社の製品を取り扱うには、百貨店やセレクトショップが各々で独自ルートを築き本国から買い付ける必要があります。そのためヴァルスタリーノは知名度に対して販売店が極端に限られてくるのです。(どうやら少し前までは八木通商が独占輸入販売権を持っていたみたいですね・・・。)
私の暮らす福岡でも以前は地元の有力セレクトショップがヴァルスター社の製品全般をラインナップしていたのですが、2年前から「諸事情」で取り扱えなくなったとのこと。この1年で色々と調べて回りましたが、少なくとも私の活動圏内では手に入らないと結論付けました。
唯一可能性がありそうだったのは業界最大手のビームス。ここは数年来ヴァルスタリーノの別注(コットンナイロンやナッパレザーのモデル)を扱っているので、ヴァルスター社と強力なコネクションを持っていることは間違いないのですが、問い合わせた結果インラインモデルを置く予定はないとのこと。残念、欲しいのはの普通のスエードモデルなんですよ。
ということで、今回は東京に店舗を構える某有名店のオンラインショップを利用させていただきました。私にとっては高額な商品なので、ネットでの購入には多少の抵抗感もありましたが、過去にも1度だけ利用した実績があり、返品にも応じてくれるとのことで、決心がついた次第です。
現状、東京か大阪以外だとヴァルスタリーノを実店舗で購入する機会もなかなか無いので、私のようにネット購入という手段を選ばれる方も多いかもしれません。でも、やっぱり実際に手に取らないと不安なことをありますよね。
だからこそ、そのような方々にも向けてより分かりやすく詳細なレビューをお届けしようと思います。
傑作スエードブルゾンをレビュー
概要
念願叶い手に入れたこちらのヴァルスタリーノ。表生地は王道のスエードモデルで、冬場の着用を見据えてライニングありを選びましました。それに「一生モノ」として長く使う覚悟があるなら耐久性の面も見逃せませんからね。
シルエットは日本人の体型に合わせて身幅や丈感を調整を加えたJAPAN SLIM FIT。やっぱりヴァルスタリーノはジャストフィッティングがカッコいいんです。
カラーは「カフェ」と表記されたダークブラウン。実はこのカラーを希望するが故に購入へのハードルが上がっていました。ただでさえ少ないヴァルスタリーノ取り扱い店ですが、その中でも定番とされるキャメル(サンダル)とオリーブ、ダークネイビーの3色しか用意されていないケースが多いんですよね。キャメルにも惹かれていましたが、年齢を重ねても似合うのはダークブラウンの方かなと。
デザインに関してはもはや語る必要もありませんが、後発のブランドが模倣した無数の「バルスターブルゾン」同様にリブ状のスタンドカラーと大型のパッチフラップポケットが印象的です。
ちなみに価格は約16万円。おかげさまで完全に金欠です(笑)。国内正規代理店を持たないヴァルスター社の製品は並行輸入品となるため、もう少し抑えめな価格で販売しているお店もありましたが、購入実績があり信頼できるところを優先しました。
ディテール
とにかく美しいスエード。そして、ひとえにスエードといっても様々な種類の革が存在します。一般的には牛(カウ、カーフ)や羊(シープ)、鹿(ディア)などが馴染み深いのですが、ヴァルスタリーノでは山羊(ゴート)のスエードが採用されています。
このゴートスエードの特徴は柔らかく軽量ながら、耐久性に優れている点です。イメージとしてはシープスエードとカウスエードのハイブリットのような感じでしょうか。また、他の革と比べてゴートスエードは毛足が短くなっているため、手触りはしっとりと滑らかで、ほのかな光沢を放っています。スエード特有の柔和な雰囲気ともまた違い、洗練されていて高級感が溢れています。良い意味でスエードらしくない。
さらに驚いたのが着用後にシワが残りにくいということ。スエードを含むレザージャケットを着れば大なり小なりの差はあれどシワがつくものですが、このヴァルスタリーノのスエード生地には跡がほとんど残りません。復元性の高さも上質さの証でしょうか。
スタンドカラーと袖&裾のリブはこんな感じ。スエード生地は「一生モノ」を謳うのに相応しい耐久性を持っている一方で、リブに関しては若干の懸念を抱いていましたが、それも杞憂でした。とにかく分厚い。こんなに肉厚なリブは見たことがない。このリブがヨレてしまう未来は1mmも想像できないですね。
また、このリブにはウールが44%も混紡されているので、ちゃっかりと防寒性能も兼ね備えています。冬でも安心ですね。ちなみにアンライニングモデルの場合はコットンが主原料となっているので、質感もまた変わってくるのかもしれません。
デザイン上目立つ場所に位置する各種ボタンは高級感のある本水牛製で、ブランドネームが白抜きで刻印されています。
特徴的なパッチフラップポケット。実は画像のように横からも手を入れることが可能で、実質4ポケットとなっています。実際に使うことはなさそうですが、元ネタのA-1フライトジャケットから引き継いだディテールです。
バックスタイルは至ってシンプル。T字の切り返しが入るだけで、アジャスター等は付属しません。
ライニング(裏地)は袖通しの良いレーヨン製。カラーは表地と同系統色のダークブラウンです。
サイズ感とシルエット
身長173cm体重65kg肩幅44cmの私が着ているのサイズ46。着丈・身幅ともにほぼ理想的なジャストフィットかと思います。インポートのブルゾンは袖丈が長すぎる傾向にあるので心配もありましたが、ちょうど良い丈感です。さすがJAPAN SLIM FITを名乗るだけありますね。
強いて言えば腕を動かした際に肩回りが少しだけ張るような感覚がありましたが、そこはやはり天然レザーです。着用を続けるうちに多少は生地が伸びてきます。
また、サイズ46で着丈は63cmとかなりのショート丈となっています。リブブルゾンの場合インナーが裾からはみ出るとあまりカッコよくないので、ニットを合わせるなら丈が長すぎない物を、シャツを選ぶならタックインしてクラシカルに着こなしましょう。
前を閉める場合は中のボタン2つだけを留めた着こなしがおすすめ。基本的に全留めすることはありません。
1サイズ下げてよりタイトに着ることもできそうですが、それならインナーは薄手のシャツかニットしか合わせられないでしょう。私の場合、サイズ46でも身幅に多少のゆとりがあるので、やや厚みのあるミドルゲージやローゲージのニットをインすることも可能です。
コーディネート
ブルゾン:VALSTAR(ヴァルスター)
シャツ:HITOYOSHI(人吉シャツ)
パンツ:INCOTEX(インコテックス)
まずは無難にデニムシャツを取り入れたコーデ。ブルゾンというカジュアル属性が強いアイテムですが、ジャケットスタイルを組むようにドレッシーな着こなしが様になります。もちろんシャツはタックインが基本です。足元には色味が限りなく近いスエードローファーを合わせてみました。
ブルゾン:VALSTAR(ヴァルスター)
ニット:EDIFFICE(エディフィス)
パンツ:A.P.C(アーペーセー)
ジャストサイズに合わせたヴァルスタリーノは全体的にコンパクトなシルエットとなるので、パンツは細身の物を選ぶとバランスが取りやすいですね。ブルゾン+ジーンズとなると一気にカジュアルな感じに仕上がりそうですが、ちゃんと大人っぽさをキープできているのはスエードの上質さ故ではないでしょうか。
ブルゾン:VALSTAR(ヴァルスター)
ニット:UNIQLO(ユニクロ)
パンツ:GERMANO(ジェルマーノ)
先程のコーデのようにタートルネックとの組み合わせは鉄板だと思いますが、存在感のあるヴァルスタリーノのスタンドカラーにはモックネックの方がすっきりと収まりますね。そして太めのパンツも意外とイケる。
まとめ
ようやく憧れのヴァルスタリーノをワードローブに迎えることができました。おそらく私にとってのレザーブルゾンはこれが「アガリ」の一着になるのかなと思っています。
スエードブルゾンという特性上、着用期間や場面は自ずと限られてきますが、だからこそ長く着られるはず。「一生モノ」という表現は比喩じゃなくて字面通り「一生使う予定のモノ」と捉えていただいて結構です。
そして表革同様にスエードも経年変化を愉しめる素材です。他のスエードと違いゴートスエードは毛足が短い故に、エイジングにより起毛箇所が押しつぶされ独特な雰囲気の光沢が生まれるのだとか。将来的にも楽しみですね。
今回は以上です。