高止まりの様相を見せる新型コロナウイルスですが、一方で今年の夏は3年ぶりに行動制限のない夏となり、久しぶりに旅行を楽しまれた方も多いのではないでしょうか。
かくいう私もお盆休みを利用して、数年振りに鹿児島に住む祖母の家を訪れました。目的は一度も直接顔を見せられていない、妻を合わせるため。親族のみで行った結婚式にも遠方&コロナ禍を理由に参加することが叶わなかった祖母との対面は2年越しの念願です。
ただ、この状況下で長居するわけにもいかないので、1時間程祖母の家で過ごした後は、近隣の温泉旅館へ宿泊し、翌日は熊本を訪れる小旅行を楽しんできました。
一泊だけですが、こうして外泊するのも久しぶり。そして、こういう時に活躍するのがボストンバックです。2泊以上となればキャリーバッグの出番ですが、1泊だけならちょうどいいサイズ感なんです。コロナ前はちょっとした出張とかでよく使っていましたが最近はめっきり活躍の場を失っていました。
私が所有しているボストンバッグはOrobianco(オロビアンコ)というブランドの物。わりとよく見聞きする名前ですが、何かといわくつき(!?)なブランドなので、人によっては抱くイメージも異なることでしょう。
ということで、今回は久しぶりに手に取ったボストンバッグをご覧いただきながら、私なりのオロビアンコ評を書いてみます。
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オロビアンコが日本で成功を収めるまでの経緯
公式HPによると、ブランドは1996年にイタリア・ミラノで創業して、1999年に日本に本格上陸したとされています。主力はナイロン素材を用いたバッグですが、現在では革小物や腕時計、さらにはシューズまで幅広く手掛けるなど、総合アパレルブランドとしての地位を確立しつつあります。
・・・という具合で、一見するとよくあるインポートブランドですが、ここの場合は日本での成功に至るまでの経緯がやや異質。
まず、オロビアンコを語る上で外せないのがフェリージの存在。同じくナイロンバッグで人気を博すフェリージは、類似ブランドと表現しても差し支えはないかと思いますが、世に出たのはフェリージが先。
オロビアンコ同様にイタリアで1973年に創業したフェリージは、本国では「知る人ぞ知る」ぐらいの知名度でしたが、1990年代に入り日本へ進出すると思わぬ大ブレークを果たします。現在でも定番として一定の人気を誇っていますが、当時の過熱ぶりは凄まじかったようで、多くの百貨店やセレクトショップがこぞってフェリージのバッグを取り扱っていたそうです。
ところが2000年代に入るとフェリージの輸入代理店を務めていたフィーゴをユナイテッドアローズが完全子会社化したため、その他の小売り店ではフェリージの製品を取り扱うことが出来なくなってしまいました。(ちなみに2021年にフィーゴはBRIEFINGを取り扱うユニオンゲートグループへと売却されています。)
そこで「ポストフェリージを発掘せよ」という命題の下、白羽の矢が立ったのが創業間もなく、現地でも全くの無名ブランドだったオロビアンコだったのです。
そもそも元ネタであるフェリージ自体、日本企業が主導してきたブランドでしたが、オロビアンコの場合はさらにその「企画物」色がより強く出ていたため、一部の層からはあまり良い評価はされてこなかった一因でもあります。
ただ、ブランドイメージとその本質はまた別物。私が所有するオロビアンコ製品をフラットな視点で評価していきます。
所有するボストンバッグをレビュー
概要
こちらが6~7年前に購入したオロビアンコのボストンバッグ。使用機会が限られているので、年数の割に状態は良いかと。記憶がかなり曖昧ですが、30%OFFぐらいのセール価格の3万円程度で買ったと思います。
主素材はナイロンで一部本革を使用した、ここが得意とするコンビモデルですね。オロビアンコのナイロンバッグといえばネイビーの印象が強くありますが、こちらは渋みの効いたダークグリーンです。レザーの色味とも相性が良く、落ち着いた雰囲気があるので、この配色は結構気に入ってたりします。
サイズ感は素人採寸で幅45cmマチ15cm高さ35cmとボストンバッグとしてはやや小ぶり。ただ、一泊用と考えれば十分な容量が確保されており、これ以上大きくても持ち運びにくいだけなので、実際使うとなればちょうどいいサイズ感じゃないかと思っています。
ちなみに、あのトリコロールリボンも付属していましたが、すぐに捨てたので手元には残っていません。リボンを付けたままの方が良いのか否かという議論もあるそうですが、普通に考えれば外した方が無難でしょう。
ディテール
オロビアンコの謳い文句の1つはリモンタ社のナイロンを使用しているということにあります。同社のナイロン素材はエルメスやプラダなどのハイブランドで採用されてきたことで知られており、先程からよく名前の挙がるフェリージでもリモンタナイロンが使われています。
リモンタナイロンといえば、深みのある上品な光沢と滑らかな手触りが特徴・・・なのですが、見ての通りヴィンテージ風の加工がなされているのでその風合いは伝わってきません。これはこれで好きなんですけどね。
そもそもレザーだろうとスーツの生地だろうと、同じメーカーの素材だからといって、同じクオリティなわけがなく、必ずグレードというものがあります。私の所有品ではそこまで質感は分かりませんが、店頭に並んでいる品物や会社の後輩が持っているオロビアンコのナイロン製品を見る限り、やはり値段なりという感じではないでしょうか。
革についてもナイロン同様で、加工が施されているので、質感はイマイチ分かりづらい。それなりのレザー好きとして特に惹かれるポイントはありません。
トリコロールのリボンと並んでオロビアンコを象徴するディテールはこのブランドロゴが刻印されたエンブレムです。鏡面仕上げされたステンレスは購入当初こそ、光沢を放ってきれいなのですが、どうしても擦れたりする箇所なので、経年によって小傷が増えていき、どんどんみすぼらしい感じになってきます。出来ればサテン加工とかの方が良いんじゃないかなとは個人的に思いますね。
バッグの内側はボストンバッグらしく、ジップポケットが一つ付いているだけのシンプルな構造。ちなみに側面に取り付けられているメタルプレートにはイタリア製である旨が記されています。
底面が床に触れないように底鋲が取り付けらています。トートバッグやブリーフケースと違って、ボストンバッグならホテルのロビーなどで直置きする場面もあるので、必須なディテールです。
側面に付いているフックを掛けるとバッグ上部のボリュームが抑えられるという仕組みになっています。これが意外と便利で、旅行の行きと帰りで荷物の量が変わるようなケースでも過不足なく対応できますね。
この記事を書きながらその存在を思いだしましたが、謎のレザーベルトが付属していました。使い方がよく分からなかったので、ずっと放置していました。
それでちょっと考えてみたんですが、先程のフックに繋げるとちょうど持ち手が長めのトートバッグのように肩掛けが可能になりました。多分これで使い方はあってると思うのですが・・・。これでお土産を買い過ぎても手がふさがる心配もありませんね。
まとめ
なんやかんやと言われることの多いオロビアンコですが、デザインは主張しすぎることなく洗練されていて(強いて挙げればブランドエンブレムは少し気になりますが…)、道具としての機能性は申し分はありません。
クオリティに関しては賞賛するほどのものではありませんが、値段を考えれば妥当ではないかと思います。
その成り立ちからブランドのバックボーンに重みがないこと、少し前に流行っていたのでいまさら感は拒めないこと等々、いくつかのマイナスイメージも付きまといますが、純粋に物だけを見たら決して悪くはないというのが私のオロビアンコ評です。
このボストンバッグも全然くたびれる気配がないので、もうしばらくお世話になりそう。
今回は以上です。