男性の鞄選びって結構難しいですよね。何を持っても色々ケチが付いてしまうイメージもありますが、私は服のポケットにはハンカチすら入れたくない性分なので、どうしても何かしらの鞄が必須です。
ただ、洋服に干渉するような鞄、つまりショルダーバッグやバックパックのように身体に掛ける類の鞄は苦手なので、必然的に仕事ではブリーフケース、プライベートではトートバッグを手にすることがほとんどです。
大人なのでトートバッグも基本的には革製品を選びますが、夏が近づくにつれ見た目の上でちょっと重苦しくなることもあるので、これからの季節はキャンバス生地のトートバッグを重宝してます。
キャンバストートは過去にご紹介したアミアカルヴァの鞄を持っているのですが、あれはちょっと大きすぎて(それが良い一面もあるのですが…)使用場面を限定するので、程よいサイズの物を狙っていました。
そこで今回手に入れたのは以前から公言していた通り、L.L.ビーンのボート・アンド・トートです。
購入理由はサイズ感とトートバッグの元祖と云われるバックボーンに惹かれたからなのですが、実際に使ていく中でそれだけでは済まされない実用品としての魅力に気付かされます。
登場から80年近く経ってなお愛される続ける定番品の実力は伊達じゃありませんね。
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L.L.Beanについて
日本ではあまりにもトートバッグが有名過ぎることから、バッグメーカーと勘違いされている節もありますが、歴としたアメリカを代表する総合アパレルブランドの一つです。
そもそもL.L.ビーンのルーツは狩猟用靴の製造にあり、ボート・アンド・トートと2大看板を成すビーン・ブーツは1912年の創業当初から現在に至るまで作り続けられ熱心なファンを獲得しています。
参照:メンズ エル・エル・ビーン・ブーツ、6インチ 通販|L.L.Bean公式オンラインストア (llbean.co.jp)
狩猟用品を扱っていた流れを汲んでか、現在ではアウトドアテイストが強いカジュアルウエアを得意としています。またテントやキャンプチェアなどのアウトドア用品も本格的に展開していて、昨今のアウトドアブームの乗って幅広い世代に再注目されています。
ボート・アンド・トートをレビュー
概要
一見するとどこにでもある「普通のトートバッグ」ですが、その表現がそもそも間違っていて、世に溢れるこの「普通のトートバッグ」の形状はこのボート・アンド・トートが元祖。大袈裟に言えば他が模倣品です。リーバイスの501然り、ラコステのL1212然りオリジネーターには特別な魅力を感じますね。
ボート・アンド・トートの誕生は1944年にまで遡ります。その用途は冷蔵庫がない時代に保冷目的で使用する切り出した氷を運ぶための物でした。過剰なまでに分厚いキャンバス生地は溶けた氷が染み出してしまわぬように、2重に補強された底布は数十㎏はある氷の重荷に耐えられるようにという現代の事情とは異なる理由があります。ちょっとしたロマンを感じますね。
ボート・アンド・トートのロマンを語る上で外せないのが、現在でも創業の地メイン州の自社工場で職人の手作業によって作られているということ。良くも悪くもアメリカ製らしい粗さも目立ちますが、そこが実用品としての武骨な雰囲気を醸し出してるように感じます。そういう点も含めてこのバッグの魅力なんです。
ディテール
手に取った瞬間に普通のキャンバストートとは違うことを理解させられる24オンスの重厚な帆布。一般的なジーンズに使われるデニム生地が10~14オンスとされるので、その厚みがよく分かりますね。
生地の強靭さ故に、支えなしでも完全に自立するというキャンバス素材らしからぬ特徴を持つこの鞄。マチ幅があるとはいえ裏地なしの一枚生地でここまできれいに立ち上がるキャンバストートってあまりないですね。
元々重い荷物を運ぶことを想定して設計された鞄なので、ハンドルは負荷がかかりにくい太めの形状。後述しますがハンドルの長さを選ぶことが出来て、今回はスタンダードなレギュラー丈を購入。手持ち専用で肩掛けはちょっと難しいです。
ややムラのあるステッチから分かる通り、縫製は全て職人によるハンドメイド。一般的に縫い跡は綺麗で目立たないことが良しとされますが、この武骨なステッチこそ古き良きアメリカを体現するディテールではないでしょうか。一方で縫製には頑丈なナイロン糸を使用しているので耐久性にも抜かりはありません。
底面はこんな感じで、全体が補強用のカラー布で覆われています。また最も負荷の掛かる底面では縫い終わりがダブルステッチになっていることが分かりますね。
ボート・アンド・トートの購入を検討する際、おそらく最もネックになるポイントがこれ。シンプルを極めたこの鞄にはインナーポケットが付いていないのです。私の場合はバックインバックとして無印良品のポーチを使っているので、さほど問題ではないのですが、鍵や目薬みたいな小物をそのまま投げ入れると高確率で行方不明になってしまいます。ルーツはあくまでも氷の塊を運ぶための袋なので、オリジナルを忠実に再現した結果です。
ただ、L.L.ビーンにはインナーポケット付きやジップトップモデルも用意されているので、個人の好みや用途に応じて選べば宜しいかと思います。
ちなみに内側を覗くと至る所に長く伸びた端糸が散見されて、なかなかワイルドな感じの仕上がりに。なぜちゃんと処理していないのかはよく分かりませんが、不良品ではなくこういう仕様なのでご安心を。
サイズ感
参照:ボート・アンド・トート・バッグ、オープン・トップ 通販|L.L.Bean公式オンラインストア (llbean.co.jp)
用途によって様々なサイズから選ぶことが出来るのもボート・アンド・トートの魅力の1つ。「ミニ」から「エクストラ・ラージ」まで実に5サイズ展開で、今回私が購入したのは画像右上のミディアムです。ちなみに比較画像にはありませんが一番小さい「ミニ」はお弁当バッグのようなサイズ感をイメージしてください。
参照:ボート・アンド・トート・バッグ、オープン・トップ 通販|L.L.Bean公式オンラインストア (llbean.co.jp)
さらにはハンドルの長さもレギュラーとロングから選べます。「らしさ」を感じるのはレギュラー丈の方ですが、肩掛けをするのであればロング丈を視野に入れても良いかもしませんね。ただ、全体のバランスを考えたらロングハンドルはラージ以上のボディサイズがないと不釣り合いなような気がします。特に男性の場合は。
身長173㎝で標準体系の私が「ミディアムサイズ×レギュラーハンドル」を実際に持つとこんな感じ。正直ラージサイズの方が見栄えは良いのですが、普段使いするには容量が大き過ぎて(仕切りやインナーポケットがないので一層大きく感じます。)かつ既に手元にあるアミアカルヴァのキャンバストートとサイズ感が被るので、ミディアムサイズを選んだのですが、実にこれが使いやすい。
スマホと財布それに小物類を入れたポーチを放り込めばそれなりに空間は埋まって、なおかつ折り畳み傘やタブレット端末を追加しても十分に収まります。それに出先で購入したシャツも2枚ぐらいなら多分何とかなるでしょう。ちょっと小さいかなと思った見た目も慣れれば全く気にならなくなりました。
ついでに言うと分厚すぎる生地を使ったこのバッグは、レザーバッグ並みに重さがあり、ラージ以上のサイズとなると何も入ってなくても結構ずっしりと重みを感じるので、購入の際はその点も気に掛けおく必要があるでしょう。
カジュアルダウンにも
氷の塊を運ぶための実用品であったこのバッグですが、アイビーリーガー達に愛用されてファッションアイテムへと昇華されたという経緯があります。そのためどう見てもカジュアルな鞄でありながらアメトラとも親和性が高いという一面もあるのです。
そういった側面を利用したコーデがこちら。ブレザーとミリタリーパンツの組合わせ私好みですが、タイドアップしているせいでどうも堅苦しさが残ります。そこで一見すると合わなそうなこのバッグを投入することでカジュアルダウンを試みました。小物を使ったカジュアルダウンという意味ではローテクスニーカーやベースボールキャップと同じような感じです。大人ならレザーバッグが基本だと思いますが、逆説的にこういう使い方もありですね。
ちなみに、ボート・アンド・トートのアイコンカラーであるグリーンではなくネイビー(Blue Trim)を選んだ理由は紺ブレと合わせることを前提にしているからだったりします。
魅力的な経年変化
ボート・アンド・トートの魅力といえば味わい深い経年変化も忘れてはいけません。20年30年と使い続けられることも多く、中古市場でも高い人気を誇ります。参考画像の個体は90年代の品だそうです。ハンドルの擦れ切れ具合、くたびれて哀愁漂うキャンバス生地。堪りませんね。
特筆すべきはここまでの経年変化に耐えられる頑丈さでしょう。普通この手のバッグは経年変化云々以前に物理的な寿命を迎えてしまうものですが、24オンスの分厚すぎる生地と粗いように見えて抜かりのない質実剛健な造りだからこそ魅力的な経年変化を成し遂げることが可能なのです。
まとめ
似たようなトートバッグは世界中にいくらでも存在しますが、豊富なバリエーションと歴史的価値に基づくロマン、圧倒的な耐久性とそれにより訪れる味わい深い経年変化はまさに唯一無二。名品たる所以は一言では言い表せませんね。
私のボート・アンド・トートはまっさらな状態で、まだ気恥ずかしさもありますが、これから年月を重ねて少しずつ魅力的に仕上げていければと思います。
今回は以上です。