
春夏の必需品であるライトグレーのスラックスはGTAのHERRICK(エリック)がその役割を担ってきましたが、シルエットと丈感がここ最近の好みと外れてきたため、入れ替えを狙っていました。
とはいえ優先順位は他よりも低めだったので、今季は見送る予定でしたが、前々からチェックしていたアイテムがセールにかかっていたため、この夏の内にワードローブに迎え入れることとなりました。
今回購入したのはSO(エスオー)の1プリーツスラックス。当ブログでもお馴染みの五十嵐トラウザーズ同様にパンツ専門のビスポークテーラーとして活躍する尾作 隼人氏が監修したブランドです。
「存在感がある」とか「個性的」といった表現とは無縁な至って普通のスラックスですが、日本人の脚を知り尽くした尾作氏が作った紙型ということもあって、見た目の美しさや穿き心地の良さには目を見張るものがあります。まさに中庸を極めたといった感じでしょうか。それではどうぞご覧ください。
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SO(エスオー)について

文化服装学院を経て銀座の老舗テーラーからキャリアをスタートさせた尾作 隼人氏。2007年に日本ではまだ珍しいパンツ専門の職人として独立します。当初はテーラーからの請負仕事が中心でしたが、その実力が評価され次第に自前のビスポークの依頼も増えていき、現在では国内のみならず海外にも数多くの顧客を持つようになりました。
ビスポーク以外では2017年にパターンオーダーと既製品のブランド「Pantaronaio Osaku Hayato(パンタロナイオ・オサクハヤト)」を立ち上げ、近年ではエミネントスラックスとの協業でも話題になりました。
そのような中で2022年より始動した「SO(エスオー)」は尾作氏とハイエンドのセレクトショップとして知られるストラスブルゴが手を組んで誕生したブランドです。そのネーミングはイタリア語で仕立屋を意味する「Sartorial(サルトリアル)」と尾作氏のそれぞれのイニシャルに由来します。発端はストラスブルゴではありますが、現在は様々なショップで取り扱われており、尾作氏が関わるいくつかのブランドの中でも目にする機会は一番多いのではないでしょうか。
ブランドのコンセプトは「究極の中庸」。近年はクラシック回帰がトレンドということもあり、シルエットやディテールが少しくどいパンツが溢れる中、SO(エスオー)のスラックスはどれも至ってシンプル。だからこそ尾作氏が手掛ける美しいパターンが際立ちます。
縫製は高い技術を持つ国内の工場に依頼しており、尾作氏自身が足繫く工場訪れることでビスポークに近い仕立てを実現しています。また採用される生地も日本製の割合が高く、純国産の色が濃いところも個人的は魅力を感じるポイントですね。
円安が続く今の時代においては、純国産は価格の面でも有利に働くのか、インポートブランドと比べるとお値打ち感のある3万円代という価格設定も非常に良心的です。
SO(エスオー)の1プリーツスラックスをレビュー
概要

SO(エスオー)にはワイドフィット・クラシックフィット・スリムフィットの3種類が用意されており、本品(ST22)は最もベーシックなクラシックフィットになります。「クラシック」という名称ではありますが、全体的にはすっきりとまとめられており、誰が穿いてもすらりと脚が長く見える普遍的なカッコよさを感じるシルエットとなっています。これまで数多くのビスポークを通して日本人の脚を熟知した尾作氏が作成したパターンの賜物です。
生地は春夏物らしいトロピカルウールですが、目付が265g/mとやや厚手となっているので秋口まで問題なく穿くことができるかと思います。最近は11月前半まで春夏物が仕舞えませんので、7月に入って購入したとはいえ、年内だけでもまだまだ出番はありそう。

色はミディアムグレーと表記されていましたが、トーンはだいぶ明るめなので私としてはライトグレーと認識しています。実際に手持ちのライトグレーのパンツ(GTAのHERRICK)よりもわずかに明るいですからね。これ以上トーンが明るくなると組み合わせに制約が生まれるので、春夏にはこれぐらいが一番勝手がいい。
最近は2プリーツ&サイドアジャスター仕様のパンツが(ドレス派の中では)主流になりつつありますが、本品はいつの時代でもスタンダードな1プリーツのベルトループ付き。個人的にはサイドアジャスターの方が好みではありますが、ベルトを締めるのも嫌いではありません。
定価は35,200円。インポートでこのクオリティなら確実に5~6万円コースでしょう。さらにセールで30%OFFとなっていたので、予定を前倒しにして購入したのも致し方なしですね。
ディテール

国産ウール生地の名産地である尾州産のトロピカルウール。適度な厚みと張り感があるため、シワにはなりにくくデイリーユースには頼もしい素材となっています。また、クリアカット仕上げが施されて表面の毛羽立ちは抑えれており、汗をかいてもさらりと心地よく穿くことができます。

腰周りは1プリーツのベルトループ付き。中央付近にはベルトのバックルを固定するピンループも付いています。
このように平置きにした際に自然と後ろ側の生地が上にずれている様子が分かるかと思いますが、これは美しい後ろ姿を作り出すためにヒップの部分をグッと持ち上げでいるためです。視覚的にも脚が長く見え、ビスポークパンツで稀に見かけるハイバックのような効果が期待できます。

遠目で見ると2プリーツのようにも見えますが、外側にある線はプリーツではなくダーツなんです。腰周りのもたつきを解消するためのディテールなのだそうですが、私は初めて見たかもしれません。こういう仕様はビスポーク職人ならではの発想なのでしょうか。

前開きはジップアップにフックと実用的な仕様。

各種ボタンには風合いのあるナットボタンを採用しています。

ピスポケットはボタン付きの両玉縁。


裏側を確認するとマーベルトや前身膝下まで伸びたキュプラ裏地などが見られます。ここら辺もさすがは抜かりがありませんね。

裾の処理はいつも通りダブルの4.5cmです。
サイズ感とシルエット

身長173cm 体重65kg 標準体型の私が選んだのはサイズ46。ウエストはちょうどよく、お尻周りはややタイトめではありますが、サイズアップさせる程ではありません。基本的にはいつものサイズで大丈夫かと思います。
クラシックフィットという名称ではありますが、裾幅は18.5cmと決して太さがあるわけではなく、むしろ最近の基準だと細身の分類に入るかもしれません。それでも大人っぽいく落ち着いた雰囲気があるのは股上の深さにあります。サイズ46で股上は約27cmあるので、ある程度ウエスト位置を上げて穿くことができ、脚長効果だけではなく、サスペンダーで吊り上げたようにクリースがストンと落ちる美しいシルエットを作り出します。プリーツ入りのため腰周りには適度なゆとりを持たせていますが、裾に向けてのテーパード具合も強すぎずに自然なのも良いですね。

後ろ姿はこんな感じ。ヒップはホールド感高めな設計のため、多少圧迫される感じはありまが、典型的な日本人体型で扁平尻を持つ私のお尻を美しく補正してくれます。
コーディネート

ジャケット:FIVE ONE(ファイブワン)
シャツ:メーカーズシャツ鎌倉
パンツ:SO(エスオー)
ネイビージャケットを使ったオーソドックスなジャケパンスタイル。爽やかなリネン混のシャツと合わせるならパンツはこれぐらい明るいトーンがしっくりきます。クラシカルなパターンのジャケットですが、股上と渡り幅がしっかりとあるので上下のバランスは取れています。

ポロシャツ:LACOSTE(ラコステ)
パンツ:SO(エスオー)
シューズ:YOAK(ヨーク)
今の時期ならポロシャツを合わせてこんな感じに装います。ビジネスならローファーになりますが、休日ならスニーカーやサンダルを持ってきてカジュアルな雰囲気に。合わせるアイテムの幅広さもベーシックなグレースラックスの魅力です。
まとめ
セールで手に入れたSO(エスオー)のスラックスをご紹介しました。一見すると至って普通のドレススラックスのようですが、シルエットやディテールの随所に工夫が凝らされており、さすがと唸らせれるものがありますね。
紹介が遅れてしまったこともあり、あいにく現時点では今シーズンモデルはどこもサイズ欠けが目立ちますが、ワンランク上のベーシックなスラックスをお探しの方には間違いなくおすすめできますよ。興味のある方は引き続きSO(エスオー)をチェックしてみてください。私としても今後も注目したいブランドの1つになりました。
今回は以上です。