今年こそ挑戦してみたと思っていたグルカサンダル。
色々と見て回りましたが、やはり定番であるParaboot(パラブーツ)のPACFIC(パシフィック)が良いんじゃないかなという結論に至りました。
何気に人生初のパラブーツで、それがシャンボードやミカエルといったメインどころじゃないのは邪道のような気もしますが、これはこれで魅力的な一足です。
【関連記事】
パラブーツについて
皆さんご存じのパラブーツですが、本ブログでは初登場となるので、形式的にご紹介しておきます。
1908年、革靴の裁断師だったレミー・リシャール・ポンヴェール氏により、フランスの中東部の村 イゾーにて靴工房を開業。2年後にリシャールポンヴェール社を設立します。当時はオーダーメイドの登山靴などを作っていたそうです。
転機が訪れたのは1927年のこと。創業者のポンヴェール氏がアメリカに滞在していた際に見かけたゴムで覆われたブーツに着想を得て、革靴にラバーソールを取り付けることを思い付きます。
早速、ゴムの原料であるアマゾン産のラテックスをブラジルのパラ港から直輸入し、オリジナルラバーソールの生産に着手します。「パラブーツ」というブランド名は「パラ港」にちなんだネーミングなんですね。
そんな命名に関する逸話からも分かる通り、パラブーツにとってラバーソールは重要なアイデンティティであり、一部のドレスラインを除くとアウトソールはオリジナルのラバーソールが基本となります。
実はラバーソールを自社製造する革靴ブランドはパラブーツだけなんだとか。
その他、パラブーツを象徴するようなトピックとして、無骨な見た目で耐久性と防水性に優れたノルヴェージャン製法やオイルを多分に含んだリスレザーを採用したアッパー等が挙げられます。
こうした特徴から、パラブーツは数あるシューズブランドの中でも確固たるオリジナルティを持った存在といえるのではないでしょうか。
だからこそ、ここ日本でもこだわりの強いモノ好き達から熱狂的な支持を得ているわけなんですね。
パラブーツのパシフィックをレビュー
概要
パラブーツのグルカサンダル「PACFIC(パシフィック)」。シャンボートやミカエル、ウィリアムといった看板モデルが並ぶフランス製ラインではなく、デッキシューズのバースやそれをベースとしたローファーのコローと同様にスペイン製ラインとなります。
アッパー素材にはいくつかのバリエーションがありますが、初パラブーツということでリスレザー一択でした。カラーはNOIRと表記されたブラック。
今では多くのシューズブランドがグルカサンダルをラインナップするようになりましたが、数ある中からこのパシフィックを選んだ最大の理由は「華美になりすぎず、程よくカジュアルである」ということ。
グルカサンダルはサンダルカテゴリーの中でも非常にドレッシーなアイテムで、それが大きな魅力ではあるのですが、市場にはドレスシューズの木型をそのまま流用したようなロングノーズでシャープなシルエットの物が多く、そういうのはちょっと違うのかなと。
私にとってグルカサンダルはあくまでもカジュアルサンダルの延長線上にあります。流麗なシルエットは求めていません。
一方で野暮ったいサンダルを履きたいとも思わないので、その辺のバランスが実に秀逸。サンダルとしてのカジュアルさも残しつつ、大人が選ぶに相応しい洗練された雰囲気を纏っていることが、このパシフィックの魅力ですね。
カジュアル一辺倒ではないということがよく分かるのは、こちらのサイドビュー。つま先から甲にかけてのボリュームは低めに抑えられており、またメンズのサンダルにしては珍しくヒールに高さがあるので、立ち姿がとても美しいのです。シルエットに関しては文句なくほぼ理想的。
着用感等に関しては後述するとして、全体的に満足度が高い一足ではあるのですが、唯一気になるポイントを挙げるとすればセメント製法が作られているということ。
セメント製法とはアッパーとソールを接着剤でくっつける製法で、高級革靴で広く採用されるグッドイヤーウェルト製法やパラブーツの代名詞でもあるノルヴェージャン製法と違い、ソール交換が行えません。
一般的に安価な革靴で採用される製法と認知されており、基本的には修理不可で使い捨てになります。セメント製法ゆえに柔らかい履き心地が可能になっているという側面もありますが、それをどう取るか。
ちなみに価格は46,200円。パラブーツのネームバリューからすれば安い気もしますが、セメント製法のサンダルと考えればちょっと高いかなと個人的には感じてしまいます。少し前まで3万円台だった気がするんですけどね・・・。
まぁ、その点を加味した上で購入至ったわけなので、何かと惹かれるところはあるのです。
ディテール
オイルをたっぷりと染み込ませたリスレザーは独特の鈍い光沢を放ちます。撥水性も申し分ないので、小雨程度であれば気を遣う必要はなさそう。また、リスレザー特有のブルーム(ロウが浮き出た白い粉)は今のところほぼ気にならない程度です。
幅広なアッパーの編み込みと補強のためそれぞれの継ぎ目に施された閂止めはパシフィックを象徴するディテールで、ミリタリー由来ならではの力強さが表現されています。図らずもそれが「程よいカジュアル」に繋がってくるのです。
つま先には芯材が入っているので、革靴のような一定の構築感があります。
ベルトはバックルにより5段階で調節可能。
ちなみに多くのパラブーツの靴にはこの位置に緑のブランドタグが取り付けられていますが、パシフィックの場合はそれが省かれます。実はあの緑タグは少し苦手だったので個人的には都合がいい。
バックル側のベルトはゴム素材なので、多少の伸縮性を持っています。意外とこれが履き心地にも影響していると思うんですよね。
内張りはなく、インソールは同色のレザー製。このインソールの下には発泡素材が敷き詰められているのである程度のクッション性があります。
踵の作りはまさに革靴のそれ。つま先同様にヒールカップにも芯材が使われしっかりとした作りとなっているので、踵のホールド具合もまずまず。
アウトソールはもちろんパラブーツ謹製のオリジナルラバーソール。パシフィックでは「SPORT」というソールが採用されています。硬いで有名なパラブーツのラバーソールにしては返りが良く、その名が表す通り、運動性に優れたソールです。
サイズ感
参考までにこちらが私の足のサイズ。平均的な身長に対して足はやや小さめ。スニーカーだと25.5~26.0cm、革靴だとUK6やEU39前後を選ぶことが多いですね。
パラブーツはモデルによってフィッティングが全く異なり、サイズ選びが非常に難しいとはよく聞きますが、私の場合はパシフィックのサイズ39がジャストで、珍しく他のサイズを検討するまでもなかったです。
ただ、注意すべきはハーフサイズの展開がなく、一番下のサイズが39までしか用意されていないということ。私のようにぴったり合うサイズがあれば良いのですが、既存サイズで違和感を覚えたり、そもそも私より足が小さいような方だと満足なフィット感を得られない可能性が高い。
サンダルといえども革靴に近いフィッテイングが求められるので、サイズバリエーションはもう少しあった方が良いのかなとは思いました。なんせ素足で履くので、サイズ感があってないと靴擦れしちゃいますからね。
履き心地はどうだ?靴擦れはしないの?
インソールのクッション性は高く、アウトソールの返り具合も自然な感じで、新品の時点で既に履き心地は良好。また、グッドイヤー程ではありませんが、詰め物が沈み込むことで、自分の足型に沿って多少の経年変化が発生するそうです。
グルカサンダルは素足で革靴を履くようなものなので、皮膚が擦れて出血をする場合があるのですが、アッパーには柔らかな質感のリスレザーが使われていることもあり、足馴染むは良く、痛いと感じるようなこともありません。
先に触れた通り、サイズが合っているこが前提ではありますが、グルカサンダルの中でも比較的に履きやすいモデルだと思います。
コーディネート
シャツ:HITOYOSHI(人吉シャツ)
パンツ:GTA(ジーティーアー)
シューズ:Paraboot(パラブーツ)
シャツとウールスラックスを合わせたようなドレッシーな装いにも自然と馴染むあたりは流石。なんならこのままジャケットを羽織っても違和感なさそうですね。
ポロシャツ:LACOSTE(ラコステ)
パンツ:INCOTEX(インコテックス)
シューズ:Paraboot(パラブーツ)
お国は異なりますが、同じくミリタリーが出自のファティーグパンツと合わせてみました。程よくボリューム感のあるサンダルなので、太めのパンツとも好相性。
もう一つのグルカサンダル「FERRET(フェレット)」
パラブーツのグルカサンダルといえば多くの方がパシフィックを連想するところですが、実は「FERRET(フェレット)」というもう一つのモデルが存在します。
パシフィック同様にスペイン製でセメント製法により作られていますが、アッパーの編み込みが細く、全体的にシャープなシルエットによってドレッシーな趣が強く打ち出されています。ソールも薄手の物が採用されているみたいですね。
ややフェミニンな印象が強くはなりますが、よりエレガントなグルカサンダルをお探しの方にはぴったりかもしれませんね。
まとめ
パラブーツの定番グルカサンダル「PACFIC(パシフィック)」をご紹介しました。
実は購入したのは3月末のことで、流石にしばらく出番はありませんでしたが、ここ最近になってようやく履き下ろしました。とはいえ本領発揮はもう少し先ですかね。
いままで夏の履物はローファーかビルケンシュトックのサンダルしか選択肢がなかったので、まさにその中間的なグルカサンダルは様々なシーンで重宝しそうです。
今回は以上です。